アドラー心理学とは?|自立と貢献を重視する考え方

個人の組織マネジメントや人材育成の現場では、社員のモチベーション向上やチームワークの強化、心理的安全性の確保が重要な課題となっています。
多くの組織の課題に対するアプローチの一つとして、アドラー心理学が注目されています。
アドラー心理学は、「人間の行動は過去ではなく未来の目的によって決まる」という目的論を軸とし、共同体感覚勇気づけの重要性を説く心理学です。
本記事では、アドラー心理学の基本概念、組織マネジメントや人材育成における活用方法、そして成功事例について詳しく解説します。

アドラー心理学とは?

アドラー心理学の特徴と、昨今注目されている理由を解説します。

アドラー心理学の特徴

アドラー心理学は、オーストリアの精神科医 アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)によって提唱された心理学で、人間の行動を「目的」に基づいて捉える考え方を特徴としています。

具体的な特徴として、以下の3つが挙げられます。

  1. 目的論(未来の目標が行動を決める)
    人間の行動は、過去の経験よりも未来の目的によって決まる
  2. 共同体感覚(社会とのつながりを重視)
    他者との関係を大切にし、社会に貢献することで自己価値を見出す
  3. 勇気づけ(ポジティブな関わりによって行動を促す)
    他者の成長や前向きな行動を支援することで、人間関係を良好にする

アドラー心理学が注目される理由

近年、組織マネジメントや人材育成において、アドラー心理学の考え方が活用されています。
その理由として、以下の点が挙げられます。

  1. 個人の自立と主体性を促進する
    自分で考え、行動できる社員を育成することで、組織の生産性を向上させる
  2. 職場の心理的安全性を高める
    失敗を恐れず意見を出せる環境を作り、イノベーションを促進する
  3. メンバー同士の信頼関係を強化する
    共同体感覚を養い、チームの連携を強化する

アドラー心理学の主要概念

一見とっつきにくく感じるアドラー心理学ですが、身近な例とともに考えると非常にわかりやすい考え方といえます。
アドラー心理学の主要な概念を4点紹介します。

目的論(原因ではなく、目的に着目する)

アドラー心理学では、フロイトの原因論(過去の経験が現在の行動を決定する)とは異なり、目的論(未来の目標が現在の行動を決定する)を重視します。

例えば、「人前で話すのが苦手な人」がいた場合、その理由は原因論と目的論で全く異なるものとなります。
・原因論:「過去に失敗して恥をかいたから、もう人前では話したくない」
・目的論:「恥をかきたくない(未来の目的)があるから、人前では話したくない」

目的論では「未来にどのように進みたいか」に焦点を当てるため、前向きな変化を促しやすい特徴があります。

共同体感覚(社会とのつながりを重視)

アドラー心理学では、人間が幸福を感じるためには「共同体感覚」が不可欠であると考えます。
共同体感覚は、以下の3つの要素で成り立っています。

  1. 自己受容(自分を肯定的に受け入れる)
  2. 他者信頼(他人を信じ、良好な関係を築く)
  3. 他者貢献(他人や社会に貢献することで、自分の価値を実感する)

共同体感覚が強い組織ほど、社員同士が協力し合い、エンゲージメントが高まる傾向にあります。

勇気づけ(Encouragement)

アドラー心理学では、「勇気づけ」を重視します。
勇気づけとは、相手の成長や前向きな行動を促す関わり方を指し、以下のような方法が該当します。

上司

「〇〇の分野で、丁寧さが群を抜いているね。」

と、具体的に評価する。

上司

「どうすればもっと良くなると思う?」

と、問いかけて相手に考えさせる。

勇気づけを実践することで、社員は自信を持ち、積極的に行動できるようになります。

課題の分離(Separation of Tasks)

アドラー心理学の特徴的な考え方の一つが、「課題の分離」です。
これは、「自分がコントロールできる課題」と「他人がコントロールすべき課題」を明確に分ける考え方です。

例えば、
・「部下が成長するかどうか」は部下の課題であり、上司が強制するものではない
・「部下が残業して業務を片付けるかどうか」は部下の課題であり、上司が無理に押しつけるものではない

この考え方を職場に取り入れることで、無駄な干渉を減らし、個々が自立して責任を持つ環境を作ることができます。

アドラー心理学を組織に導入するメリット

アドラー心理学の考え方を導入するメリットを、企業側と従業員側それぞれから解説します。

企業にとってのメリット

  • 人間関係の改善
    アドラー心理学で重視される「共同体感覚」が高まることで、上下関係や部署間の壁が低くなり、チームの協力体制が強化されます。
  • 社員の自立と積極性の向上
    「勇気づけ」の考え方を取り入れることで、ミスや失敗に対する前向きな姿勢が醸成され、従業員が積極的にチャレンジしやすい環境が生まれます。
  • モチベーションと離職率の改善
    「自分が組織に貢献できている」と実感できる環境が整えば、組織への愛着や自己肯定感が高まり、結果として離職率の低下につながります。

従業員にとってのメリット

  • 自己肯定感の向上
    「目的論」に基づいて「今できること」に集中する思考を身につけることで、過去の失敗や他者との比較にとらわれず、自分の価値を見出しやすくなります。
  • 対人関係のストレス軽減
    「課題の分離」や「他者貢献」の視点を持つことで、批判や対立ではなく、協力して解決策を探る習慣が根づき、ストレスの少ない職場環境が実現します。
  • キャリア形成の明確化
    「将来どうなりたいか」を重視する思考が身につくことで、長期的なキャリアビジョンの明確化にも役立ちます。

アドラー心理学の導入を成功させるポイント

実際に組織にアドラー心理学を活用するための具体的な方法を紹介します。

「勇気づけ」の習慣化
上司や同僚が、成果やプロセスを前向きに捉え、相手の存在を認め合うコミュニケーションを意識的に行うことが重要です。
失敗を責めるのではなく、「次に活かすにはどうするか」を共に考える姿勢でいる必要があります。

「課題の分離」を尊重する
自分が解決すべき課題と、他者の課題を明確に区別することで、責任の所在がはっきりし、対人トラブルを防ぐことができます。
相手の課題に踏み込みすぎず、自分の課題は自分で処理するというルールを浸透させることが大切です。

目標設定とフィードバックの仕組み
「目的論」を活かし、各自が「どんな目的を持って仕事に取り組むのか」を明確にし、定期的にフィードバックを行うことが効果的です。
1on1ミーティングなどを活用し、上司と部下が対話できる機会を設けると良いでしょう。

他者貢献を意識するチームづくり
個人の成長だけでなく、チームや組織に対して「どのように貢献できるか」を考える文化が定着すると、メンバー同士の信頼関係が深まり、協力し合う風土が育まれます。

アドラー心理学の導入事例

サービス業を営むX社では、チームビルディングの一環としてアドラー心理学の「勇気づけ」を取り入れ、社員同士が相互にフィードバックし合う仕組みを導入しました。
改善点を指摘するのではなく、「すでにできている部分」に目を向けることで、社員のモチベーションが向上し、顧客対応の品質向上にもつながりました。

よくある質問(FAQ)

Q1: アドラー心理学とフロイトの心理学はどう違いますか?
A: フロイトは過去の経験(原因論)を重視し、アドラーは未来の目的(目的論)を重視します。

Q2: ビジネスにアドラー心理学を取り入れるメリットは?
A: 部下のモチベーション向上、チームの協力体制の強化、心理的安全性の確保などが期待できます。

Q3: どのように実践すればよいですか?
A: 「勇気づけ」や「課題の分離」を意識し、日常のコミュニケーションやフィードバックに取り入れることが有効です。

まとめ

アドラー心理学は、個人の成長と組織のチームワーク向上に有効な考え方です。
共同体感覚や勇気づけを活用することで、心理的安全性を高め、エンゲージメントを向上させることができます。
組織マネジメントや人材育成において、リーダーシップの強化や社員教育の手法として活用し、より良い組織づくりを目指してみてはいかがでしょうか?

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