
気づいたらキレて語気が強くなっている自分がいる。なんとかしたい。
企業研修やセミナーでよくいただくお問い合わせに、気づいたら頭に血が昇っている、つい大きな声になってしまっている、というお悩みがあります。
怒りのマネジメントや、アンガーマネジメントと呼ばれる解決法にはさまざまな手法がありますが、今回は特に職場やビジネスシーンで使える、怒りの「予防」と「対策」について解説します。
怒りの予防と対策の両輪をうまくまわし、怒りの感情に振り回される状況を打破していきましょう。
怒りの感情に振り回されなくなることで、
・上司自身のストレスが軽減される
・部下とのコミュニケーションが円滑になる
・職場環境がよくなる
などの、良い変化を実感いただけますよ。ぜひご参考くださいね。
怒りを「予防」する方法

まずは「キレないようにする」というの怒りの「予防」が大切です。
何か問題が起きてから対処するよりも、最初から問題が起こらないようにケアした方が良いに決まっていますね。
アメリカ建国の父とよばれるベンジャミンフランクリンも「1オンスの予防は1ポンドの治療に値する。」と言っています。つまり「予防」は「治療」に勝るということです。
特にビジネスシーンで使える怒りの「予防」の方法を大きく2つご紹介します。
カウンセラー(相談相手)を得る
怒りを予防する1つ目の手段に、相談相手をみつけ、話を聞いてもらうことが挙げられます。
人間は誰かに何かを話すとき、頭の中にある情報を整理して伝えようとする性質があります。この性質をうまく利用して、日頃の悩みを整理整頓していくのです。
頭の中で雑多に広がっていた悩みを言語化し、相談相手に丁寧に聞いてもらうことは、「ガス抜き」につながります。
研修で色々な方とお話をしていると、忙しい毎日のなか、なかなか落ち着いて仕事を振り返ることができいない方、悩みを一人で抱え込んでしまっている方が多く見受けられます。
そんな方こそぜひ、信頼できるカウンセラーを見つけ話を聞いてもらってください。
実際にカウンセラーへの相談を実践してくださった方からは、
「モヤモヤが晴れた!すごくスッキリした!」や、「私の言い方にも問題があると思いました」などという声を多くいただいています。
悩みを整理することは職場の問題点を見つけ出することにもつながるので、特に管理職・上司層の方にはカウンセラーを活用いただきたいと思います。
カウンセラー(相談相手)に適した方とは
カウンセラー(相談相手)には、守秘義務を守ってくださる信頼できる方や、傾聴スキルを持っている方(話をまとめ、わかろうとする聞き方ができる方)が良いでしょう。
身近に該当者がいない場合は、プロの心理カウンセラーに頼むのも手ですよ。
最近ではオンラインで対応してくれるカウンセラーもいますので、ご自身のライフスタイルに合ったカウンセラーを探してみてください。
日報を書く
怒りを予防する2つ目の手段に、キレてしまった日を振り返ることが挙げられます。つまり「怒りの日報」をつけるのです。
手順に沿った日報をつけることで、自らのキレてしまった状況を振り返り、マネジメントしていくことができるようになっていきます。
「怒り」は第二感情
そもそも、心理学で「怒り」は第二感情と呼ばれています。
「満たされなかった」や、「期待を裏切られた」といった不満や悲しみなどの最初の感情が第一感情と呼ばれます。この第一感情が叶わなかったときに「怒り」という第二感情が現れるのです。
第一感情や第二感情を整理し、俯瞰することを日報を書くなかで行なっていくのです。
日報の書き方
日報を書く手順は以下の通りです。
1.事実を書く
2.あなたの感情を書く
3.あなたの願望を書く
4.Iメッセージを組み立てる
具体的に説明していきます。
1.事実を書く
まずは起きた事実を書きます。案外この事実の認識がうまくいっていない場合もあるので、ここで事実を客観的に整理しましょう。
(例)部下に「今日までに」と頼んでおいた企画書ができていなかった。
2.あなたの感情を書く
事実についてあなたがどう感じたかを書きます。もしくは、その時につい言ってしまったセリフでもOKです。
(例)大事なクライアントさんに提出する企画書だから、部下の提出後、こちらで確認をし修正をかける予定だと何度も伝えたはず。
しかし企画書ができていなかった。できないなら事前に伝えて欲しかった。
仕事をなめている!と思った。
この「なめている!」という怒りが第二感情=怒りですね。
3.あなたの願望を書く
あなたが本当はどうして欲しかったのかを書きます。
(例)期日通りに企画書を仕上げてほしかった。
この「仕上げてほしかった」という不満や悲しみが第一感情です。
4.Iメッセージを組み立てる
Iメッセージとは「I=私」を主語にして相手に伝える方法です。
主語を「You=あなた」ではなく「I=私」とすることで、相手に受け入れてもらいやすく、相手を責めた印象をやわらげることができるのです。上司が部下に指導するときは、YouメッセージではなくIメッセージで伝えることが有効といわれています。
職場で部下に正しく指導する練習となるので、日報ではIメッセージをしっかり組み立てましょう。
(例)大切なお客様だから頼むと繰り返し伝えていたのに、企画書の作成をやってくれていなかった。私は正直残念に感じるし、期待していただけに裏切られた気持ちだ。
今まであなた自身が怒っているときのセリフを思い起こしてみてください。
「仕事なめてるのか!ぶっつけ本番でできるなんて、そんな甘くないぞ!」などと、「君はこうだ!」と決めつけていませんか?
一方で、Iメッセージは「上司である私はこう感じているよ」と伝えるもので、受け取り方は部下に委ねられているのです。
なお、Iメッセージの組み立てが難しく感じた場合は、「事実」+「影響」+「感情」の三部構成を意識してみるとスムーズに作成がしやすいですよ。
事実:今日が締切の企画書ができていない。
影響:これでは軌道修正ができず、ぶっつけ本番になってしまう。
感情:大切なお客様だから頼むと繰り返し伝えていたのに、企画書の作成をやってくれていなかった。正直残念だし、期待していただけに裏切られた気持ちだ。
Iメッセージをコミュニケーションの念頭においておけば、頭のクールダウンができ、怒りの「予防」につながります。
怒りの「予防」ができるまでにはどれくらい練習が必要?
忙しい日々を送っているとどうしても「怒り」がお腹の底から湧き出てしまうことがありますよね。怒りをの「予防」にはどれくらいの練習が必要なのでしょうか。
まず、カウンセラーに話を聞いてもらうのは週に1度、どんなに少なくとも月に1度は機会を作りましょう。毎日、刻一刻と仕事は続いているので、ちょっと頻度が多いかなと思うくらいがちょうどいいのです。
そして日報は怒りの感情が湧き上がるたびに、コツコツと続けてみましょう。次第に、意識しなくてもIメッセージをつくり、相手にうまく伝わるように言葉を紡げるようになりますよ。
まずはメモ書きからでも始めてみませんか。少しずつでも実践することで、変化が実感できるものです。
怒りを「対策」する方法

どんなに怒りを「予防」しても、どうしても怒りの感情が湧き出てきてしまうこともありますよね。
そんなときは「その場から離れる」ことが対策方法となります。
(例)「5分後に話がある。」
(例)「少し席を外すので、戻ったら話がある。」
などと伝え、まずはその場を離れるのです。
間を作って怒りの感情だらけの状態から理性のアンテナを立てる、ということですね。
その場を離れたときはまずは深呼吸をし、怒りの日報のつけ方に基づいてIメッセージをつくりましょう。
落ち着いてIメッセージで話ができると思ったら、元の場所に戻り指導をはじめるのです。
まとめ
怒りの「予防」と「対策」について解説してきました。
怒りの予防:カウンセラーを得る・日報をつける
怒りの対策:その場から離れる
しかし「対策」はあくまでも対症療法でしかありません。
やはり、まずは「予防」を大切にし、怒りに対して準備をすることがおすすめです。準備をしているから、緊急時の「対策」が生きてくるのです。
すぐに怒りのマネジメントができるようになるのは難しいものですが、頭の片隅に置いてできることから始めてみてください。
怒りをマネジメントできるようになれば、怒りにまつわるご自身のストレスが軽減されるだけでなく、周囲との良好な関係を築くことができます。 |
怒りのマネジメントは職場だけでなく、プライベートでももちろん使うことができますよ。怒りが原因でストレスを感じている場面で、ぜひ活用してみてくださいね。