コーチングの「質問」は未来に焦点を当てる|上司が陥りやすい誘導尋問の罠と、求められる部下への深い理解

上司

「部下にどう思うか聞いたのに、結局自分の考えを押し付けてしまった」
「部下が自分の顔色を伺い、正解を探そうとして口ごもっている」

コーチングを学び、現場で実践しようとする管理職や上司の方から、上記のようなお悩みをよく伺います。コーチングを実践している方のなかには、質問をしているようでいて、実は自分の頭の中にある正解へと部下を導こうとする誘導尋問を行なってしまっているケースがあります。
本記事では、部下の内省と自律的な行動を促すためのコーチング技術として、

・未来に焦点を当てた質問テクニック
・部下の認識スタイルに合わせた質問テクニック

を解説します。真のコーチングを実践し、部下が生き生きと行動し出せば、組織全体の自律性を高めることができますよ。ぜひ最後までお読みください。

コーチングにおける「質問」は未来に焦点を当てる

コーチングにおいて「質問」は強力な武器ですが、聞き方や質問の内容を誤ると部下を追い詰める凶器にもなります。

上司がAという正解を持っているときに、部下に「この件についてどう思う?」と問いかけた。
部下が「Bだと思います」と答えた。
上司はAに向かって軌道修正しようとした。

上記のような例は、「コーチング」ではなく、上司がAという正解に向かって誘導尋問しようとする「ティーチング」になっているかもしれません。

部下がミスをした際、上司としては原因分析をして改善につなげたい意図から「なぜ(Why)失敗したんだ?」、「なんでできなかったんだ?」と質問した。
部下の口から出てくるのは、建設的な改善案ではなく、「時間がなかった」、「他部署の連携が遅れた」といった言い訳ばかりであった。

上記は上司にとってはミスが起きない正しい方法を導くための質問でも、部下にとっては「責められている」と感じられてしまい、強い自己防衛本能が働いてしまった例です。結果として、自分を守ろうとする部下の口からは言い訳しか出てこないうえ、上司も「言い訳をするな」と感情的になりやすく、チーム全体が悪循環に陥ってしまいますね。

部下の思考を前向きに動かすためには、過去の失敗や不足ではなく、「あるもの(リソース)」や「未来」に焦点を当てた質問への転換が必要です。そこでおすすめなのが、数値を活用した「スケーリング質問です。

上司

「目指す状態が10点満点だとしたら、今の出来栄えは何点くらいですか?」

部下

「3点です……」

上司

「お、3点もあんですね。その3点は、具体的に何ができているからついた点数ですか?」

部下

「期限は守れましたし、必要なデータは一通り集められました」

上司

「なるほど、そこは確実にできていますね。では、+1点の4点にするために、明日から変えられる小さな工夫はありますか?」

ミスをしてしまった部下は、叱られると思って萎縮してしまいます。そこで上司は叱るのではなく、できている部分を数値とあわせて言語化してもらい、「+1点」にするための行動を考えてもらいましょう。部下は詰められている感覚を持たずに、自ら次のアクションを設計できるようになりますよ。

上司の質問の質が変われば、部下の思考が変わります。そしてそれは、部下の行動の変化につながるのです。

部下の認識スタイルにあわせた言葉を選ぶ

コーチングの精度を劇的に高めるための視点として、認識スタイルの考え方を紹介します。人にはそれぞれ、思考・行動のクセや無意識に反応してしまう言葉の傾向があり、アセスメントツールiWAM(アイワム)では、認識スタイルと呼ばれています。

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iWAM(アイワム)では、認識スタイルは16カテゴリー・48種類あるとされており、本記事では特に仕事に影響の大きい動機づけの方向性についての認識スタイル:目的志向型と問題思考・回避型について紹介します。

目的志向型

何かを行う際、目的に焦点を当てて明確な方向性を持つ傾向の強い方を指します。

上司

「どんな成果を出したいですか?」
「理想のゴールはありますか?」

など、未来の獲得目標を問う質問が響きやすいです。ティーチングの場面では、成果につながることが想像しやすい方法を伝えるとよいでしょう。

問題思考・回避型

問題を発見・回避したり、リスク管理・解決したりすることに焦点を当てる傾向の強い方を指します。

上司

「どんなリスクを減らしたいですか?」
「今、懸念している問題はありますか?」

などの、トラブル回避や問題解決に焦点を当てた質問が響きやすいです。ティーチングの場面では、失敗しないような注意点を伝えると納得感が増しやすいです。

コーチングを行う際は、相手の認識スタイルだけでなく、自分の認識スタイルも理解したうえで取り組むと精度が高まりやすいです。

上司が目的志向型で、部下が問題思考・回避型だった。
上司が「目標は何ですか?」と自分の認識スタイルにあわせた目的志向型の質問をしても、部下は動機づけがされづらい。
一方、上司が「失敗しないためにはどうしましょうか?」と部下の認識スタイルに合わせた問題思考・回避型の質問をした際、部下は生き生きと話し始めた。

誰もが自分の認識スタイルにあわせた質問をしがちですが、上記のように相手の認識スタイルにあわせた質問をするよう心がけてみてください。
相手が何に反応するのかを見極め質問の角度を変えることが、個の成長を促すマネジメントの極意なのではないでしょうか。

相手の認識スタイルの見極め方や影響を与えやすい言葉については、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ、あわせてお読みくださいね。

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まとめ|コーチングの本質は相手の深い理解

コーチングの本質は、巧みな質問テクニックではありません。自分のもつ正解を手放し、未来志向で部下の可能性を信じることでなのではないでしょうか。ぜひ、部下とのコミュニケーションの際は、相手の認識スタイルを理解し、関わり方を選び直す勇気をもってくださいね。

まずは明日、部下との対話で「なぜ?」を封印し、「+1点にするには?」と問いかけてみてください。そして、自分の正解に誘導するのではなく、部下から出てきた答えを一度受け止めてみてください
上司の小さな変化が、部下の自律性を大きく引き伸ばしていきますよ。

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