

「褒めて部下のやる気を引き出すつもりが、逆にプレッシャーを与えているようだ。」
「褒めて伸ばす」育成手法が主流の現在、部下と関わるときは褒めることを意識している方も多いでしょう。しかし、期待したほど部下が成長せず、関わり方に迷いを感じてはいませんか?
良かれと思った称賛が、実は部下の現状維持を招き、思考を停止させてしまっている可能性があります。本記事では、
・単に褒めるだけでなく、部下の次の行動を導く「理解・共感・支援」の3ステップ
・部下の思考スタイルの傾向を見極め、部下の心に確実に響く言葉を選ぶ対話スキル
を紹介します。自律型組織をつくるための具体的なヒントとして、ぜひ最後までお読みください。
フィードバック方法の再設計で部下の自律的な行動を引き出す
人材育成の現場では、「褒めて伸ばす」方法は一種の常識として定着しています。しかし、経営幹部や人事責任者の皆様のなかには、

「部下を褒めても、思ったほど成長スピードが上がらない」
「褒められた部下は笑顔は見せるが、次の行動に変化が見られない」
といった違和感を抱いている方も少なくないのではないでしょうか。
実は、部下への表面的な賞賛は、安心感ではなく思考の停滞を招くリスクを孕んでいます。部下の自律性を削ぐことなく行動変容を促すためのフィードバック方法を解説します。
部下に対して「すごいね」「よくがんばったね」と声をかけることは、関係を構築するうえでとても重要です。しかし、結果や才能だけを漠然と褒めて終わってしまうと、部下は「これで良いんだ」「もうやることはない」と錯覚し、そこで思考を停止させてしまう可能性があります。部下の成長を促すためには、褒めることをゴールにするのではなく、次のアクションへのスタートラインに変える必要があります。
そこで推奨したいのが、「理解・共感・支援」の3つステップを組み込んだフィードバックへ再設計することです。
Step 1:理解(事実よりも意味付けを聞く)
まず、部下が置かれている状況や思考プロセスを丁寧に把握します。単に結果の良し悪しを確認するのではなく、

「どの部分に一番苦労しましたか?」
「そのとき何を考えていましたか?」
など、部下自身の「意味付け」や「こだわり」を聞いて部下の考えを理解します。
Step 2:共感(Iメッセージで伝える)
次に、上司自身がどう感じたかを伝えます。「君はがんばった」という評価的な言葉(YOUメッセージ)ではなく、

「粘り強く取り組む姿を見て、私は頼もしく感じました」
という主観的な感想(Iメッセージ)を伝えましょう。評価ではなく感想として伝えることで、押し付けがましさが消え、言葉が部下の心に深く届きやすくなりますよ。
Step 3:支援(伴走の仕組みをつくる)
最後に、具体的な次のアクションを共に設計します。「次もがんばって」という精神論ではなく、

「次はここを一緒に検証してみましょう」
「困ったときはこの仕組みを使ってみましょう」
など、具体的な支援策や伴走の姿勢を示します。
「理解」を示し、「共感」して、「支援」を示して次の一歩を踏み出す。
一連の流れがあって初めて、フィードバックは行動を変える力を持つのです。上記の3ステップの1つが欠けていると、部下にとっては「認められた一方で次が見えない」状況となり、迷いにつながりやすくなります。

「資料の構成を工夫したのですね。次回への改善点を見つけたのも良かったです!」
など、漠然とした「褒める」ではなく、部下が何を考えていたのかを「理解」し、がんばったことに「共感」し、次はこうしようと「支援」することが大切です。
思考スタイルの傾向にあわせた「響く言葉」の選び方
フィードバックの形式を整えるだけでなく、部下一人ひとりの思考の癖に合わせて言葉を選ぶことも大切です。仕事における思考や考え方の癖を分析するツール「iWAM(アイワム)」の視点から、大きく2つの傾向(目的志向型と問題思考・回避型)の部下へのアプローチをご紹介します。
目的志向型へのアプローチ
「達成」や「ゴール」に意識が向きやすい傾向のある方をiWAM(アイワム)では目的志向型と呼びます。
目的志向型の傾向が強い部下には、未来の獲得目標に焦点を当てた問いかけが響きます。例えば、

「今回の成功を活かして、次はどんな目標を実現したいですか?」
「この取り組みは、チームにどのようなプラスの価値を生むと思いますか?」
といった言葉のように、未来へ向けたフィードバックが響きやすいです。
問題思考・回避型へのアプローチ
「リスクの最小化」など問題を回避する言葉に安心しやすい傾向がある方をiWAM(アイワム)では問題思考・回避型と呼びます。例えば、

「次のプロジェクトで気がかりな点はある?」
「今回の経験から、再発防止のために工夫できることはあるかな?」
といった言葉が響きやすいです。「一緒にリスクを潰していこう」という問題を解決するための支援を示すことで、問題思考・回避型の部下は安心して次の行動に移ることができます。
日頃の観察から部下の傾向を見極めて適切な言葉を選択し、部下一人ひとりに響くフィードバックを心がけてみてくださいね。
思考スタイルと響く言葉については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
上司「同じ言葉がけでも、部下によって反応が全然違う。」「この部下にはどんな言葉がけをすればいいのか。」人事担当者や経営幹部の皆様にとって、組織全体のエンゲージメントを高めることは喫緊の課題です。しかし、上司が良かれと思[…]
まとめ
本記事でご紹介した「理解・共感・支援」のフレームワークと、思考スタイルに合わせた対話術は、単なる知識ではなく、明日からの部下との関わりですぐに実践できるスキルです。
・ただ「褒めるだけ」から脱却し、次の行動を引き出すフィードバック
・部下の思考スタイルを見極め、心に響く言葉を選ぶ対話力
上記の2つを意識して、まずは一人の部下との対話から、新しい関わり方を試してみてはいかがでしょうか。

「次は何をやってみたい?」(目的志向型の部下へ)
「次はどこに気をつけたい?」(問題思考・回避型の部下へ)
最後を必ず「未来への問い」で結ぶことで、組織の自律性は確実に高まっていきますよ。
その小さな変化の積み重ねが、やがて組織全体を力強く成長させる大きな駆動力となるでしょう。