部下の心に響く「Iメッセージ」の技術|効果的な「Iメッセージ」の構成法と認識スタイルにあわせたの刺さる言葉の選び方

上司

「よくがんばっているね」
「君は優秀だね」

意識して部下を褒めるようにしているのに、相手の反応が冷めていたり、モチベーションが上がっていないように見えたりすることはありませんか。実は、上司からの承認が部下に正しく届いている確率は、わずか3割程度。残りの7割は、あなたの善意が「一方的な評価」や「お世辞」として、部下の心の手前で跳ね返されている可能性があります。

本記事では、心理学に基づく「Iメッセージ」という技法を軸に、

・上司の言葉を「値踏み」に変えてしまう「Youメッセージ」の落とし穴
・事実・影響・感情の3要素で構成する、部下の心に響く「Iメッセージ」の技術

・部下の認識スタイルにあわせた「言葉の選び方」

について解説します。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

「ありがとう」の言葉は7割も届いていない

上司

「部下のモチベーションを高めるために、意識して『ありがとう』や『すごいね』と声をかけています。」

日頃からマネジメントに心を砕いている人事担当者や経営幹部の皆様であれば、承認の重要性は痛いほど理解されていることでしょう。しかし、ギャラップ社の日本企業社内調査によると、「上司からの承認が自分に届いている」と感じている部下は約3割だったことがわかりました。
つまり、残りの7割は「聞こえてはいるが、心には響いていない」状態だったのです。

「Youメッセージ」の落とし穴

上司の言葉が空回りし、部下に承認が届かない原因は「届け方のズレ」にあるかもしれません。

上司

「君は気が利きますね。」
「さすが、優秀ですね。」

一見、何の問題もない褒め言葉に見えますね。しかし、上記の言葉は部下にとってはどれも、

部下

「これって褒められてるのかな?」

と不安を抱える原因になってしまうこともある言葉なのです。
上記のようなメッセージは主語が「You(あなた)」になっている「Youメッセージ」と呼ばれています。「あなたは〇〇だ」という表現は、上司から部下への一方的な「評価」や「ラベリング(決めつけ)」として機能してしまいかねません。
つまり、上司が「称賛」のつもりで口にした言葉も、受け手である部下が「評価のラベルを貼られた」と受け止めたとき、両者の間には認識のズレが生じてしまうのです。認識のズレこそが、善意の言葉が心に届かず、空回りしてしまう原因なのではないでしょうか。
結果として、上司の承認の言葉だけが上滑りし、部下が承認を受け取れない現象が起きてしまうのです。

相手の心に届く「Iメッセージ」の3要素

部下に感謝を伝えるときにマネジメント層に求められるのが、心理学者トマス・ゴードン博士らが提唱した「Iメッセージ」への転換です。

I(アイ)メッセージ:
相手を責める「あなたは〜」ではなく、「私は〜と感じる」と自分の感情や影響を主語にして伝えるコミュニケーション技法

Iメッセージを組み立てる際の、効果的な要素は以下の3つです。

効果的なIメッセージの3つの要素

  1. 行動(事実):具体的に何をしたかを客観的に伝える
  2. その行動で何がどう助かったか(価値):その行動が周囲や業務にどう役立ったかを伝える
  3. 私の感情:私がどう感じたかを伝える

例えば、「資料が見やすくて優秀だね(Youメッセージ)」ではなく、以下のように伝えます。

上司

「今回の資料、要点が整理されていたから(事実)、事前に会議の流れをつかめて助かりました(影響)。私はすごくありがたかったです(感情)。」

Iメッセージを用いると、言われた側が「自分のどの行動が役に立ったのか」が明確になるため、自己効力感が高まり、次も同じ行動をとろうとする意欲が湧きやすくなりますよ。

認識スタイル別・承認の精度を上げる言葉の選び方

さらに承認の精度を高めるためには、部下の「認識スタイル」に合わせた言葉選びが重要です。
人はそれぞれ、仕事において物の見方・考え方・行動のクセがあります。このクセのことを認知心理学では認識スタイルと呼んでおり、iWAM(アイワム)では48種類あるとされています。
今回は、48種類の認識スタイルのうちIメッセージに関連する権力重視型・親和重視型・達成重視型の3つのスタイルをご紹介します。

これら3つのスタイルは「マクレランドの欲求理論」が背景にあります。

マクレランドの欲求理論:
人の行動を動機づける要因を「権力欲求」「親和欲求」「達成欲求」の3つに分類した理論

誰しもがすべての欲求を持っていますが、その割合は一人ひとりで異なります。ご自身の部下がどの傾向が強そうか観察していただくと、しっくりくる傾向が見つかるかもしれません。
詳しくはこちらの記事で解説していますので、ぜひご参考くださいね。

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1. 権力重視型(影響力・判断重視)

権力重視型が強い方は、判断の重さや影響力、裁量に価値を感じやすく、責任ある役割や戦略的判断、統率力が高い傾向があります。権力重視型の部下に「気配りがすごいね」と褒めても、ピンときません。

上司

「あなたの判断で会議が前に進みました。」
「あのリード感は本当に助かりました。」

など、「あなたの影響力が素晴らしい」というメッセージを伝えると刺さるIメッセージになりやすいです。

2. 親和重視型(人間関係・安心重視)

親和重視型が強い方は、仲間意識、安心感、関係性に価値を感じやすく、雰囲気作りや調整力、チームの一体感を大切にする傾向があります。親和重視型の部下に対し「君の判断のおかげで戦略が前に進んだ」と能力だけを褒めても、響きにくい場合が多いです。

上司

「あなたの気配りのおかげで、チーム全体が落ち着いて動けました。」

など、チームの一体感を増すことができたというメッセージを伝えると、刺さるIメッセージになりやすいですよ。

3. 達成重視型(成果・成長重視)

達成重視型が強い方は、目標達成や挑戦、自己成長に価値を感じやすく、問題解決を重視する傾向があります。達成重視型の方に対し「場の雰囲気を明るくしてくれて助かった」と褒めても、親和性を重視していない方には響かないことが多いのです。

上司

「あなたの工夫のおかげで、進捗が早まりました。」
「大きな成果につながって、私はとても嬉しいです。」

など、成果に直結するメッセージを伝えると、刺さるIメッセージとなりやすいです。

まとめ|具体的なIメッセージで承認を届ける

承認とは、単なるお世辞やテクニックではありません。部下が前に進むためのガソリンです。しかし、ガソリンの種類=言葉を間違えれば、エンジンは動きません。
まずは、日常の会話から「君はすごい」という抽象的な評価をやめ、「私は助かった」というIメッセージに変えてみてください。そして、部下が何に価値を感じているのか(=認識スタイル)を観察し、部下が大切にしていることに対して承認を届けてあげてください。Iメッセージは

・部下の行動を客観的に伝える(事実)
・その行動で何がどう助かったか(価値)
・私の感情

の3要素を揃えることが鍵です。

部下

「上司は自分のことをちゃんと見てくれている!」

そう部下が実感したとき、上司との信頼関係は確かなものになり、組織のパフォーマンス向上につながりますよ。まずは明日、意識して「Iメッセージ」を伝えてみてはいかがでしょうか。

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