

「溜まったメールの返信と会議への出席だけで一日が終わってしまった」
「人材育成や、業務プロセス改善に全く手がつけられていない」
日々、組織の最前線で指揮を執る人事担当者や経営幹部の皆様のなかには、時間の使い方に関するジレンマを抱えている方も多いのではないでしょうか。
突発的なトラブル対応や、期限の迫った業務に追われ続ける状態は、単なる「多忙さ」の問題にとどまりません。上司が目先の業務に忙殺されている状況は、組織全体で「今、何に取り組むべきか」という優先順位の基準が揃っていないサインかもしれません。本記事では、
・「緊急度」と「重要度」の錯覚
・「アイゼンハワー・マトリクス」の活用法
をご紹介します。最後まで記事を読み進めていただくことで、個人のタイムマネジメントスキル向上はもちろん、組織全体で価値ある業務に集中し、未来への投資時間を確保するための具体的な手法を学ぶことができますよ。ぜひ最後までお付き合いください。
優先順位の基準を揃える重要性
多くの上司の方から、慢性的な時間不足や人手不足のお悩みを伺います。しかし、業務が終わらない原因を「個人の処理能力不足」や「人事部の見通しの甘さ」だと決めるのは早計かもしれません。根本的な問題は、組織のなかで「何が重要で、何が緊急なのか」の基準が揃っていないことにあるケースが多いのです。
例えば
- お客様からの問い合わせ
- 他部署からの急な資料作成依頼
は、確かに「今すぐ対応すべき(緊急)」案件に見えます。しかし、舞い込んでくる仕事を反射的に対応し続けることで、本来管理職が担うべき中長期的な戦略立案や、部下の指導などの「重要」な業務が圧迫されていないでしょうか。
多くの現場では、「緊急=重要」という誤った認識があります。何が重要かという優先順位の基準が揃っていないと、緊急に見えるものに時間を奪われ、組織としての重要事項が進まないという問題が起きてしまうのです。
アイゼンハワーマトリクスを活用した基準づくり
優先順位の基準を揃える「アイゼンハワーマトリクス」を活用した基準つくりをご紹介します。
アイゼンハワーマトリクスとは:
アイゼンハワーが提唱した優先順位を整理するフレームワーク。重要なことと緊急なことは全く違うという考えのもと、業務を「緊急度」と「重要度」の2軸で4つの領域に分類する。

問題は、多くの方が「緊急=重要」と錯覚してしまうことです。
アイゼンハワーマトリクスの4領域のなかで、組織の未来を作るために最も注力すべきなのは第2領域(緊急ではないが重要)といえるでしょう。しかし、多くの方が日々忙殺されている業務の多くは、実は第3領域(緊急だが重要ではない)に含まれているケースがあるのです。
組織の優先順位を適正化するための実践ステップ
第2領域(緊急ではないが重要)にかける時間を確保し、組織としての優先順位を適正化する方法を紹介します。
ステップ1:業務の棚卸し
まずは、ご自身やチームメンバーが抱えているタスクをすべて書き出し、4つの領域に振り分けてみてください。感覚的に処理していた業務を可視化すると、
・重要だと思っていた定例会議が、実は第3領域(緊急だが重要ではない)だった
・育成(第2領域)に全く時間が割けていない
などの事実に気づくことができます。現状を正しく認識することが、改善の第一歩です。
ステップ2:第2領域(緊急ではないが重要)の時間を「制度」で確保する
重要な業務は、「時間が空いたらやる」スタンスでは永遠に実行されません。第2領域に取り組む時間をあらかじめスケジュールに組み込むことが大切です。
「毎週〇曜日の午前中は改善活動の時間にする」
「部下との1on1は絶対にずらさない」
など、あらかじめ時間を確保しておくのです。
ステップ3:判断基準を共有する
全体を見て判断したい、物事の細部に集中したい、他の人の意見を優先したい、など、物事を判断する際の基準は、人によって様々です。例えば、
全体をみて判断したい上司と細かいところまでこだわりたい部下がいる。
上司にとっては瑣末に見える業務でも、部下にとっては重要な業務であり、業務の優先順位づけにズレが生じてしまった。
上記の例では、上司にとっては第3領域(緊急だが重要ではない=急ぎの雑務)でも、部下にとっては第1領域(緊急かつ重要=最重要)にみえているかもしれません。
一人ひとりで判断基準に違いがあるのは当然のことです。しかし判断基準のズレが放置されていては、組織の生産性は下がるばかりでしょう。なんとなくの感覚で分類するのではなく、
「緊急の基準」と「重要の基準」を明確にして分類する
のが大切です。
書き出したマトリクスをもとに、「長期的に価値がある仕事は何か」「緊急に見えるが、実は減らせる業務はないか」などをチームで話し合い、基準を共有・確定していってくださいね。
まとめ|組織で本当に優先すべきことを共有し、基準をつくる
多くの業務で多忙なとき、優先順位を見失うことは誰にでも起こり得るでしょう。しかし、リーダーが目先の緊急対応だけに追われてしまえば、組織の未来を作る「重要な第2領域」への時間は消えていき、将来的な成長が失われてしまうかもしれません。
アイゼンハワーマトリクスを活用して業務を仕分けることは、単に業務効率化することだけが目的ではありません。組織全体で「本当に大切なことは何か」を再確認するプロセスでもあります。
・「緊急」と「重要」は全く別の基準である
・「緊急」ではないが「重要」な業務が組織の未来をつくる
・業務の仕分けの本質は、時間管理ではなく価値基準の共有を行うこと
上記の3点を念頭に置き、ぜひ一度、まずはご自身のタスクを4つの領域に書き出すところから始めてみてくださいね。時間の使い方の歪みを修正し、重要事項に集中できる環境を整えることが、組織の生産性を守り、高めていく一歩となるでしょう。