
「若手が何を考えているのか分からない」
「若手とわかりあえない」
といった、世代間ギャップに起因するお悩みを、上司層や管理職の方からよく伺います。
世代間ギャップは、価値観や働き方の違いだけではなく、日本社会特有の文化的背景や制度の影響によって強められている背景があります。
本記事では、日本で世代間ギャップが深刻になりやすい理由を、「社会構造」「文化」「教育」「海外比較」など多角的な視点から読み解きます。
世代間ギャップの背景を理解することで、
・組織内の摩擦を軽減できる
・より良いチームづくりにつながる
など、組織作りに大切な視点を得ることができますよ。
ぜひ最後までお読みいただき、実践のヒントにしていただければ幸いです。
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日本社会の世代構造の変化と世代間ギャップの背景

日本では少子高齢化が進み、世代間の価値観や経験の違いがより顕著になっています。
時代背景や就業観の変化を踏まえ、日本の世代間ギャップの根本にある社会構造について考えていきましょう。
高齢化による多様な世代の共存
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでおり、職場でも団塊世代からZ世代まで多様な世代が共存するのが一般的になってきました。
団塊世代が退職後も再雇用で働き続けている企業も多く、20代の社員と60代・70代の社員が同じプロジェクトに関わるケースも珍しくありません。
多くの世代が共存する職場では、多様な視点がもたらされる一方で、

「上の世代の融通が効かない」

「若手の意見がわからない」
といった摩擦を生みやすくもあります。
また、日本の制度として「年功序列」や「終身雇用」の名残が根強く残っており、年齢が上の世代ほどポジションを保持し続ける構造も、ギャップが広がる一因と考えられます。
戦後〜令和までの時代背景の急変化
日本では、わずか数十年の間に経済・社会が大きく変化してきました。
高度経済成長期を支えた団塊世代は、「がんばれば報われる」価値観を持ち、バブルを経験した世代は「会社と共に豊かになる」ことが理想とされる傾向が強かったのです。
一方、就職氷河期を経験したX世代や、リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍を経たZ世代は、将来に対する不確実性のなかで育ち、「安定」よりも「柔軟性」や「自分らしさ」を求める傾向があります。
それぞれの世代がまったく異なる社会的体験を通じて形成された価値観を持っているため、世代間の認識に大きなズレが生まれやすいので、注意が必要です。
学歴や家族観の変化
昭和の時代には、「良い大学に入って大企業に就職すれば将来は安泰」という価値観が強くありました。
しかし、現代では非正規雇用の増加や転職の一般化により、キャリアに対する考え方が多様化しています。
また、結婚・出産・マイホーム購入などの人生の標準ルートが前提ではなくなり、ライフスタイルや家族観も世代によって大きく異なってきていますね。
学歴や家族観が大きく変貌していることを背景に、若手の価値観が上の世代に理解されにくくなり、仕事に対するモチベーションや働き方への捉え方にもギャップが生まれてしまうのです。
代表 高村が、NHK『ニュースウオッチ9』に出演し、世代間ギャップの現状と世代間ギャップ研修についてコメントしました。【登場者】代表取締役 高村 幸治(たかむら こうじ)【番組名】ニュースウォッチ9【内容】世代間ギャップについて[…]
日本の文化・教育がもたらす世代間の意識差

世代間ギャップは社会の変化だけでなく、日本独特の文化や教育によっても生まれています。
縦社会や学校教育、マナー感覚など、文化的背景から生まれやすい意識の違いを紹介します。
年功序列と縦社会の名残
日本社会では長年にわたって年功序列が基本とされ、上下関係がはっきりした縦社会の文化が根付いてきました。
団塊世代やX世代が若手だったときは、先輩や上司の意見には従うのが当たり前とされ、若手が自分の意見を主張するのは生意気と受け取られることさえありました。
一方で、Z世代をはじめとする若手社員は、フラットで対等な関係性を重視する傾向があり、年齢や立場に関係なく意見を交わせる職場を理想としています。
縦社会を前提とした価値観は、現在でも根強く残っており、

ベテラン世代
「若手はまず聞くべき」
「経験がないのに意見を言うのはまだ早い」
などの考え方が、上司や先輩の無意識のなかに存在していることがあります。
上下関係に対する考え方の差が職場内での違和感や不信感につながるケースもあり、注意が必要です。
学校教育での同調圧力の影響
日本の学校教育では、協調性や集団行動を重んじる傾向が強く、個性や自由よりもみんなと同じであることが求められてきました。
団塊世代やX世代など、みんな同じがいいという価値観のもとで育った世代ほど、空気を読むことや場の和を乱さないことに強い意識を持っています。
一方、近年では個性重視の教育や多様性の尊重が進みつつあり、若い世代ほど、自分の考えを持つことべき、周囲と違うことも認められて然るべきと感じるようになっています。
育ってきた教育背景の違いが、組織内での意思決定や発言のあり方にも影響を及ぼしているケースもあります。
例えば、若手が自分の意見を率直に述べた際、上司の層には

「最近の若手は空気を読めない」
と捉えられてしまうような場面もあります。
受けてきた教育の違いが世代間の理解を難しくしてしまっているのです。
礼儀・敬語・マナーに対する感覚の違い
日本には、礼儀やマナーを重視する文化があります。
昭和・平成初期に社会人となった世代は正しい言葉遣いや丁寧な対応が社会人の基本だと教えられてきました。
一方で、Z世代などの若手は、チャットやSNSを通じたカジュアルなやり取りに慣れており、敬語や形式に対してあまり強いこだわりを持っていないこともあります。
結果として、若手は上司の層から「軽い」「なれなれしい」といった印象を持たれてしまうことも少なくありません。
礼儀や敬語への感覚の違いが、挨拶やメール、会話のやりとりのなかで違和感を生み、コミュニケーションにストレスを感じる要因となってしまうことも多いので、注意しましょう。
世代間ギャップと敬語についてはこちらの記事で解説しています。あわせてぜひお読み下さいね。
職場でのコミュニケーションで、何気ない言葉づかいが思わぬ摩擦を生むことがあります。特に「敬語」に関しては、「軽すぎる」、「堅苦しい」、「距離を感じる」など、世代間での受け取り方に違いが生じやすい部分です。上司と部下、ベテランと若手[…]
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海外と比較した「日本的ギャップ構造」

日本の世代間ギャップの特徴をより深く理解するには、海外と比較するとわかりやすいです。
欧米との価値観や組織文化の違いに注目し、日本社会ならではの課題や改善のヒントを探っていきましょう。
欧米との組織文化の違い
海外、特に欧米の組織では、年齢や勤続年数よりも「能力」や「成果」に基づいて評価される文化が根付いています。
フラットな組織構造が一般的であり、新入社員であっても建設的な意見を歓迎される場面が多く見られます。
一方、日本の職場では年功序列や上下関係を意識したコミュニケーションが今なお根強く、若手が自由に発言しにくい環境が残されていることが多いです。
自由に発言できない環境下では、若手社員が

「意見を言っても意味がない」
と感じてしまうことも珍しくありません。
成果主義の欧米文化と、年功や人間関係を重んじる日本文化との違いは、組織内の世代間ギャップをより深刻に見せてしまう要因の一つといえるでしょう。
多様性受容と世代交流のあり方
欧米企業では、多様性(ダイバーシティ)を尊重する価値観が定着しており、年齢、性別、国籍、価値観の違いをむしろ組織の強みに変えようとする動きが活発です。
世代間でのメンタリング制度やクロスジェネレーションプロジェクトも多く導入されており、自然なかたちで世代を超えた交流が図られています。
一方、日本では形式的な上下関係や部署の壁が根強く、世代を越えた自由な意見交換の機会はまだまだ限られているケースが多いことは、皆さんにもご想像いただきやすいでしょう。
特に、年齢差のあるメンバーとの対話を

「気を使う」
「遠慮してしまう」
と感じる若手も多く、結果的に相互理解の機会が失われてしまいやすい傾向にあります。
多様性の受容に対する文化的な違いから、日本では世代間の距離が実際以上に大きく感じられてしまうこともあるのです。
日本人特有の「空気を読む」文化
日本人のコミュニケーションには、「空気を読む」ことが求められる場面が多く存在します。
言葉にしなくても察する文化はある意味で高度な対人スキルですが、世代によって「読む空気」が異なる場合が多いことが、ギャップを生む要因となっています。
例えば、ベテラン世代は

ベテラン世代
「言われなくてもわかるべき」
という暗黙の了解を前提に行動します。
一方で若手は

「しっかり言葉で説明してほしい」
と感じているケースがあります。
海外のように「はっきり言う」「自分の意見を表明する」ことが当然とされる文化とは対照的に、日本では曖昧さや遠回しな表現が好まれる場面も多いものです。
世代間で曖昧な表現や遠回しの表現の解釈が異なることも、ギャップの深さに拍車をかけていると考えられます。
代表 高村が、NHK『ニュースウオッチ9』に出演し、世代間ギャップの現状と世代間ギャップ研修についてコメントしました。【登場者】代表取締役 高村 幸治(たかむら こうじ)【番組名】ニュースウォッチ9【内容】世代間ギャップについて[…]
世代間ギャップを活かすために必要な視点

悪く思われがちな世代間ギャップですが、考え方によっては対立ではなく組織の力に変えることができますよ。
世代間ギャップを前向きに活かすための考え方や、実践的なコミュニケーションの工夫についてご紹介します。
世代間ギャップを問題ではなく「資源」として捉える
世代間ギャップは、ともすれば摩擦や問題として捉えられがちですが、見方を変えれば強みの補完関係として活用できるものでもあります。
例えば、
経験や人脈、粘り強さに強みを持つ上の世代と、柔軟性やデジタルリテラシーに長けた若手が協働すれば、より強いチームが生まれますよ。
メンバーそれぞれが世代間ギャップは足を引っ張る要素ではなく、相互補完し合う財産として捉え直すことができれば、組織の競争力そのものを高めることにもつながるでしょう。
対話の場を意識してつくる
世代間ギャップを乗り越えるには、「対話」の機会を増やすことが重要です。
単なる情報伝達ではなく、価値観や考え方の背景まで共有できるような時間が求められます。
例えば、
1on1ミーティングやワークショップの時間に、世代を超えて「自分が仕事に求めていること」「困っていること」などを率直に話せる場があると、自然と相互理解が進んでいきます。
特に上司や人事担当者が決めつけない姿勢・押しつけない姿勢を意識することで、若手も安心して本音を話すことができるようになります。
心理的安全性を高める土壌が整えば、世代を超えた信頼関係が築かれやすくなりますよ。
心理的安全性とは:
「どんな意見を言っても罰せられない。」と感じられる職場環境を作ること。
参考:ResearchGate「Psychological Safety, Trust, and Learning in Organizations: A Group-level Lens」
心理的安全性と世代間ギャップについてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてお読みください。
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教育・研修のなかで世代間ギャップを可視化する
人材育成の教育や研修のなかで、世代間ギャップをテーマに取り上げることも効果的です。
世代間ギャップを問題としてではなく、前提として理解し、どうすれば協働できるかを考える研修は、職場の空気を変える一歩となります。
実際に、世代別の傾向や価値観の違いを見える化し、対話を促すプログラムを導入している企業もあります。
こうした体感型のアプローチを通じて、「こんなふうに考えていたのか」と気づくきっかけをつくることで、共感や理解が深まりやすくなりますよ。
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まとめ
日本社会における世代間ギャップは、単なる年齢差やコミュニケーションスタイルの違いではありません。
日本独特の社会構造・文化・教育・制度などの深い背景によって形成されたものです。
「なんとなく合わない」と感じる違和感には、根拠や歴史があるのだと認識することが、対話や理解の第一歩となりますよ。
そして、世代間ギャップは決して乗り越えるべき「壁」ではなく、組織にとっての「可能性」でもあります。
・世代間ギャップを「資源」として捉える
・対話の場を意識してつくる
・世代間ギャップを可視化する
ことが、世代間ギャップを活かし合える組織へと近づけていきますよ。
違いを「正す」のではなく、「知り」「活かす」姿勢こそ、上司が持つべき次世代のマネジメントに必要な考え方ではないでしょうか。
世代間ギャップを理解し、互いの価値観を尊重しながら活かしていく組織づくりを目指し、ぜひ今日から少しずつ取り組んでいってくださいね。
エナジーソースでは組織の世代間ギャップ解消のための研修を行っています。

「“世代間ギャップ”という言葉にモヤモヤしていましたが、今日の研修で対話や変化のきっかけになるものだと前向きに捉えられるようになりました。」
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