
職場にはさまざまな年代の人々が働いています。
立場や経験の違いがある現代の職場では、世代間ギャップ(ジェネレーションギャップ)を感じる場面も少なくありません。
それぞれの世代が育った時代背景や常識が異なるため、一つの物事について、一部分しか見えないことや、見るポイントが違うことも多々あります。
また、自分の見方こそが正しいと思い込んでしまい、トラブルが起きてしまうケースもあります。
寓話「群盲象を撫でる」は、世代間ギャップのある職場を考える上で、示唆に富んだ物語です。
物事の一部だけしか見えておらず、全てを理解した気になってしまうことや、本質を見失ってしまうことのたとえとして使われる言葉です。
寓話「群盲象をなでる」
目が見えない数人が象の異なる部分に触れ、それぞれが全く違う姿を想像する寓話。ある者は鼻をつかんで蛇だと思い込み、またある者は太い脚を木の幹だと主張する。
一部の情報だけで全体を把握した気になり、誤解を生む危険性を示唆する物語として知られている。
本記事では、職場で起こりがちな世代間ギャップの「あるある」事例を通して、世代間ギャップを乗り越え、チームメンバーの一人ひとりがリーダーシップを発揮していく方法を解説します。
ぜひ最後までお読みください。
職場の世代間ギャップ「あるある」4選
現代の職場で、世代間ギャップが元でよく起きるトラブルを紹介します。
「あるある」な事例をあらかじめ知っておくことで、特に新人の方は上司や先輩に不信感を抱く前に「これは世代間ギャップが原因だ」と理解することができ、人間関係のトラブルを回避することができますよ。
1. メモ・報告の方法の違い
メモの方法の違い
会議後、ベテラン社員は手帳を取り出し、細かく書き留めたメモを確認します。
一方、若手社員はホワイトボードの写真を撮影したり、タブレットで作成した議事録を即座に共有します。
上司層は「重要な情報は紙に残しておくべき」と考える傾向があり、若手は「デジタルの方が効率的に情報共有できる」と捉えるケースが多いです。
報告の方法の違い
上司が詳細な報告書の提出を期待している一方で、
若手はチャットツールで「完了しました」と一言送るだけで報告が完結したと認識しているケースがあります。
双方にとっては自然な行動であっても、相手の前提を理解しなければ、業務上のすれ違いや不信感につながりかねないのです。
2. コミュニケーション手法の違い
電話連絡の捉え方の違い
ある上司が若手社員に電話をかけたところ、若手は電話に出ませんでした。
後ほど若手から「ご連絡ありがとうございます。ご用件はチャットで伺ってもよろしいでしょうか?」という返信が届きました。
上司は「直接話したほうが早い」と感じる一方、若手は「急用かと驚いた」「事前にチャットで一報ほしい」と思ってしまいました。
メール文化の違い
上司層は丁寧かつ詳細なメールを好む傾向がありますが、若手は絵文字を用いたカジュアルな文面や、極端に簡素な返信を選びがちです。
メールのスタイルの違いにより、「そっけない」「形式的すぎる」といった印象を互いに抱くことがあります。
3. 仕事観・キャリア観の違い
ベテラン層は、地道に業務を遂行し、時間をかけて信頼を築くことを重視する傾向があります。「まずは3年続ける」「組織に貢献することが第一」といった価値観が根付いています。
一方、若手は自己成長やワークライフバランスを優先し、効率的な成果とキャリアの柔軟性を重視します。転職もキャリア戦略の一環と位置づけており、「合わないと感じたら環境を変える」のは自然な選択肢です。
価値観の違いから「最近の若者は根気がない」と感じる上司と、「時代遅れの価値観を押し付けられている」と感じる部下の間で、認識のずれが生じやすくなっています。
4. 指導・フィードバックの違い
仕事のスタンスの違い
ベテランの上司は「仕事は見て覚えるもの」という考え方のもと、あえて細かな指示を出さずに任せる場合があります。
しかし、若手にとっては「何を期待されているのかが不明瞭で不安」と感じる原因になりがちです。
Z世代と呼ばれる若手ほど、透明なコミュニケーションを望む傾向があり、そのスタンスの違いに戸惑う上司の方も少なくありません。
フィードバックの違い
成果を出すことが当たり前とされていた世代にとっては「できて当たり前。問題があれば指摘する」というフィードバックのスタイルが主流でした。
一方、若手は承認や肯定的なフィードバックを通じてモチベーションを高める傾向があり、無言でいることが「期待されていないのでは」という不安を生むこともあります。
それぞれの世代にとって当たり前の価値観でも、相手の価値観を理解しなければ、スムーズな人材育成は難しいのです。
世代間ギャップを超えるリーダーシップ
世代間ギャップはどの職場にもあるものですが、「違い」は決して埋められない溝ではありません。
相互理解と対話によって、「違い」はむしろ組織の力になります。
違いを生かし合うチームに必要なリーダーシップの要諦を解説します。
相手の立場を想像する
異なる世代や経歴を持つ相手の言動には、それぞれ固有の背景や意図があります。
その行動の理由を想像し、理解しようとする姿勢が、円滑な関係構築の第一歩となります。
人は誰しも、自身なりの目的や価値観に基づいて行動しています。
自分の目的や価値観に基づいて行動視点は、アドラー心理学における「目的論」とも通じる考え方です。
個人の組織マネジメントや人材育成の現場では、社員のモチベーション向上やチームワークの強化、心理的安全性の確保が重要な課題となっています。多くの組織の課題に対するアプローチの一つとして、アドラー心理学が注目されています。アドラー心理[…]
相手の行動を単なる「違い」として捉えるのではなく、その背後にある意図を読み解こうとすることで、組織内の多様性は重要な情報資源となり得ます。
チームにおける心理的安全性の確保
異なる立場や意見を持つメンバーが、安心して率直に意見を交わせる環境、すなわち「心理的安全性」の高いチームを構築することが、円滑なコミュニケーションには不可欠です。
組織で新しいアイデアを生み出したり、メンバー同士が協力しながら困難を乗り越えたりするためには、互いに安心して意見を交わせる環境が大切です。そうした「安心感」を生み出す概念として注目されているのが、心理的安全性です。心理的安全性の定[…]
心理的安全性が確保された環境が整っていれば、「察してほしい」「言わなくても分かるはず」といった認識の齟齬が減り、確認や相談が自然に行えるようになりやすいです。
仮に認識のズレが生じたとしても、「実はこう感じていた」と互いの本音を建設的に伝え合うことで、対話が新たな発見や発想の起点となる可能性があります。
世代間ギャップも、心理的安全性が確保されたチームにおいては、イノベーションの源泉として機能するケースが多いのです。
解決志向によるアプローチを持つ
価値観や世代の違いに過度に焦点を当てるのではなく、「どうすればより良い形で協働できるか」を起点とする解決志向の姿勢が重要です。
ソリューションフォーカストアプローチ(Solution-Focused Approach)としても知られており、問題の原因分析ではなく、目指すべきゴールとその実現手段に着目する手法です。
組織やチームで課題に取り組むとき、どこに注目するかによって解決策の導き方が大きく変わってきます。「原因追求」よりも「解決に役立つリソースや成功事例」を探ることで、短期間で成果を引き出す解決法が「ソリューションフォーカストアプローチ[…]
例えば、ITスキルに長けた若手社員のアイデアと、豊富な業務経験を有するベテラン社員の見を融合することで、新たな業務改善策を見出すことができるでしょう。
「相互補完」の視点を持ち、違いを乗り越えるのではなく活かしあうという考え方が、持続的なチーム成果を生み出す原動力となります。
おわりに
「群盲象を撫でる」の寓話が示すように、人は自身の経験から得た一側面のみで物事を判断しがちです。
しかし、組織にはさまざまな視点や価値観を持つ人材が存在します。
その違いを前提とした関係構築こそが、多様性を活かす鍵となります。
世代間ギャップは「問題」ではなく「可能性」です。
異なる立場を尊重し、学び合い、対話を重ねることで、一人では成し得ない成果を生み出すことができます。
リーダーシップとは、特定の資質ではなく、日々の小さな理解と働きかけの積み重ねです。
多様な視点が交差する職場で、より良い未来を描くための一歩を踏み出していきましょう。
代表 高村が、NHK『ニュースウオッチ9』に出演し、世代間ギャップの現状と世代間ギャップ研修についてコメントしました。【登場者】代表取締役 高村 幸治(たかむら こうじ)【番組名】ニュースウォッチ9【内容】世代間ギャップについて[…]