
春になると、組織には新たな仲間が加わります。
期待と不安の入り混じる新入社員たちは、新しい環境に身を置きながら、日々、業務や人間関係のなかで奮闘しています。
しかし、意欲的に取り組んでいたはずの新人が、ある日突然動けなくなる。
そんな場面に、心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
新人が突然動けなくなる背景には、本人の能力不足や性格の問題ではなく、上司側の何気ないひと言が影響している可能性があります。
本記事では、上司が行っていくべき新人への日々の声かけについてご案内します。
新人の心を止めてしまう上司のひと言

「これ、前にも言いましたよね?」
「ここまでしか進んでないの?」
そんな指摘をされたとき、新人はどう感じているでしょうか。

「はい、前にも聞きました……」
「確かに完璧ではありませんが、自分なりに努力して進めてきたつもりです」
「できている部分もあるのに、なぜそこを見てくれないのだろう」
こうした声を、心の中でこらえている新入社員は少なくありません。
注意を受けた内容が正しくても、その言い方によって、新人は「自分は否定されている」と感じてしまう場合があります。
すると次の一歩を踏み出す力が失われてしまうこともあるのです。
心理学に学ぶ「自己効力感」の重要性
心理学の分野では、人が何かに挑戦し続けるためには「自己効力感」が大切だと言われています。
自己効力感とは:
「自分でもやればできそうだ」と感じる感覚のこと。
自己効力感があると、少し難しいことでも前向きにチャレンジしようという意欲が湧きやすくなります。
逆に、「どうせ自分にはできない」「また怒られるかもしれない」と感じるようになると、挑戦の芽はしぼみ、受け身の姿勢が強まってしまいます。
上司の言葉は、部下の自己効力感に大きく関与し、行動意欲を左右する大きな要因であることを、ぜひ改めて認識してくださいね。
新人の小さな「できた」に気づけるかが、成長の分かれ道
新人の成長を支えるうえで、特別なことをする必要はありません。
大切なのは、目に見える成果ではなく、「プロセスごとの変化」に気づいて声をかけることです。

「ここまで進められたんだね、すごい」
「前は戸惑っていたのに、今回はすぐ動けていたよね」
「その部分に気づけるようになったのは、大きな成長だと思うよ」
そんな何気ない言葉の積み重ねが、新人の中に

「自分にもできるかもしれない!」
という自己効力感を育てていきます。
完璧な成果よりも、前より少し進んだ、昨日より自信を持って取り組めたという、小さな前進に目を向けてくれる上司や先輩の存在が、新人にとって大きな支えになるのです。
プロセスに目を向けて承認する
もちろん、間違いをそのままにするわけにはいきません。
仕事のクオリティを保つうえで、指摘や改善のフィードバックも欠かせない要素です。
ただし、ダメ出しばかりが続くと、人は防衛的になり、周囲との距離を取るようになります。
一方で、成果だけでなく「努力」や「工夫」などのプロセスにも目を向けて承認されると、前向きな学習意欲が高まるものです。

「この点は改善が必要だけれど、こういう工夫はよくできていたね」
と伝えるだけでも、受け取り方は大きく変わるはずです。
できていないことの指摘に加えて、できてきたことへの気づきと声かけを意識してみてください。
人材育成の質がアップしていきますよ。
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おわりに
新入社員が自信をなくし、行動を止めてしまう背景に、周りからの日々の言葉がけに原因があるケースもあります。
上司や先輩が、新人の小さな「できた」を拾い上げ、言葉にして伝える。
その言葉が新人の心に火を灯し、次の行動へとつながる力になるのです。
新人が安心して挑戦できる風土は、組織の将来にとってもかけがえのない財産となります。
上司として、新人の「できていないこと」ではなく、「できるようになってきたこと」に目を向けてみてくださいね。
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部下育成にお悩みの方や組織改善を目指している方は、どうぞお気軽にご相談ください。