

「締め切りは伝えたはずなのに」
「普通、ここは確認しに来るだろう」
上司と部下の小さな認識のズレが、大きなトラブルや手戻りに発展し、頭を抱えたことはありませんか。
上記のような状況は部下の能力不足ではなく、上司の方の「自分の基準は言わなくても伝わっている」という思い込みにあるかもしれません。
本記事では、
・「予防のYouメッセージ」の落とし穴
・協力者をつくる「予防のIメッセージ」の4ステップ
・相手の認識スタイルにあわせた刺さる言葉の選び方
について解説します。「言わなくてもわかるはず」という前提を捨て、伝え方のスイッチを少し切り替えるだけで、明日からの部下への指示がスムーズになりますよ。未来のトラブルを未然に防ぎ、組織の生産性を最大化させるための具体的なコミュニケーション術を紹介しています。ぜひ最後までお読みください。
「言わなくても分かるはず」が組織の摩擦を生む

「締め切りを伝えたはずなのに、部下がまったく違うタイミングで提出してきた」
「優先順位の指示を出したのに、後回しにされていた」
現場の最前線に立つビジネスパーソンの皆様は、部下との認識のズレに頭を悩ませた経験が一度はあるのではないでしょうか。「なんで分からないんだ」「普通はこうだろう」と思いがちですが、原因は部下との間の「前提の違い」にあるかもしれません。
この認識のズレは、心理学にある「透明性の錯覚」が関係しています。
透明性の錯覚:
自分の頭のなかにある基準は、言わなくても相手に伝わっていると錯覚すること
上司が透明性の錯覚に気づかず、「普通こうだよね」と一方的な基準を押し付け続ける限り、誤解や手戻りなど組織の摩擦はなくならないといえるのです。
「予防のYouメッセージ」が認識のズレの一因
部下に指示が正しく伝わらないのは、無意識のうちに「予防のYouメッセージ」を使ってしまっているからかもしれません。例えば、

「15日締め切りだから、朝一で出してね。」
と指示を出した。上司は「15日締めなら朝一提出が常識だ」と思っているが、部下は

「15日中に終われば良いから夕方に出そう」
と解釈した。
上記のようなケースは、皆様の周りにもあるのではないでしょうか。
「朝一で出してね」という言葉は「あなたがしてね。」という「あなた」を主語にしたメッセージ=Youメッセージであり、以下の4つのポイントが含まれているといえます。
- 前提の押し付け: 「普通はこう」という自分の基準を一方的に押し付けている。
- 強制: 「~してね」という命令形になっている。
- 理由の欠如: なぜそうする必要があるのか(背景)が伝わっていない。
- 主体性ゼロ: 部下が自分で考える余地がない。
これでは部下は「責められている」と感じ、心を閉ざしてしまいます。結果として、確認不足や認識のズレが生じやすくなってしまうのです。
認識のズレを防ぐ「予防のIメッセージ」の4ステップ
そこで取り入れたいのが、「予防のIメッセージ」です。
予防のIメッセージ:
未来の状況や自分の傾向を事前に伝えることで、相手の主体性を引き出しながら認識をすり合わせる手法
予防のIメッセージの4ステップ
- これから起こりそうな未来の状況
- 自分の傾向・限界・基準
- なぜ事前に伝える必要があるか(理由)
- 協力のお願い(相手の主体性)
上記4つのステップに合わせ、伝える言葉を組み立ててみてください。例えば、先ほどの締め切りの例なら以下のように変換します。

「来週は急ぎの案件が重なりそうで、(未来状況)
私は当日連絡だと焦って判断ミスが出やすい傾向があります。(自分の傾向)
だから正確に対応したいので、(理由)
急ぎの連絡は前日の17時までにもらえると助かるのですが、可能でしょうか?(協力のお願い)」
「あなたが遅れると困る(You)」ではなく、「私の傾向としてこうだから協力してほしい(I)」と伝えることで、部下は自分事として受け止め、納得して行動できるようになりますよ。
Iメッセージについては、承認のIメッセージ・救助のIメッセージも紹介していますので、あわせてぜひご確認くださいね。
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認識スタイル別・部下に刺さる言葉の選び方
さらに予防のIメッセージの精度を高めるためには、部下の「認識スタイル」に合わせて言葉を選ぶことが重要です。
認識スタイルとは:
仕事における物の見方・考え方・行動のクセのこと。48種類のスタイルがある。
人は誰しもが「何に向かって動くか」によって、響く言葉が大きく異なります。ここでは、48種類ある認識スタイルのうち、職場で起きるすれ違いの根本原因に直結しやすい2つの認識スタイルを紹介します。
1. 目的志向型
目的志向型の傾向が強い方は、目標を設定して達成することに意欲を持ち、成果から逆算したり目的に沿って判断したりすることが得意な傾向があります。
「目標」「成果」「達成」「成長につなげる」などの言葉が刺さりやすい一方で、「トラブルを防ぎたい」などと伝えても、「それで何を達成したいの?」と考えてしまうことがあります。

「今回のプロジェクトの達成目標がタイトで(未来状況)
私は目的に沿って判断したい傾向があるから(自分の傾向)
ゴールから逆算して進めたい。(理由)
重要連絡は前日の夕方までにもらえると助かります。意見を聞かせてください。」(協力)
と、「目的」や「成果」に関連付けて伝えるとスムーズに動いてもらえることが多いです。
2. 問題思考・回避型
問題思考・回避型の傾向が強い方は、失敗やトラブルの回避や察知に意欲を感じる傾向があります。
「危険察知」「ミスを防ぐ」「慎重に」などの言葉が刺さりやすい一方で、「成果を出したいからどんどん進めて欲しい」と言っても、具体的なリスクが見えず不安を感じやすくなります。

「来週は調整トラブルが起きやすい状況です。(未来状況)
私は当日だと判断ミスが出やすい傾向があるから(理由)
トラブルを避けるためにも(理由)
重要連絡は前日17時までにもらえると助かるのですが、いかがでしょうか?」(協力)
と、「問題思回避」や「リスクヘッジ」に関連付けて伝えると納得して動いてもらいやすくなりますよ。
部下が「目的志向型」か「問題思考・回避型」か判断できない場合は、

「仕事をするとき、目的やゴールが見えると動きやすいですか?それともリスクや問題点が明確になると動きやすいですか?」
と聞いてみるのも有効です。
まとめ|3つのIメッセージを使いこなし組織の生産性を向上させよう
マネジメントにおける「言葉」は、単なる情報の伝達手段ではありません。部下が迷わずに進むための「言語のインフラ」といえるでしょう。
・過去の行動に光をあてる「承認のIメッセージ」
・現在の困難を支える「救助のIメッセージ」
・未来のズレを防ぐ「予防のIメッセージ」
これら3つのI(アイ)メッセージを使いこなすと、上司の言葉は部下に届きやすくなり、組織の生産性は飛躍的に向上していきますよ。
いきなりすべてを変えるのは難しいかもしれません。まずは、次の指示の言葉の前に一度立ち止まり、「自分の前提を押し付けていないか?」と自問してみてくださいね。
言葉が変わると人が変わります。そして、人が変わると組織が変わります。ぜひ小さな一歩からはじめてみてくださいね。