
新入社員の皆さんは、日々の業務の中でチームワークの大切さを実感していることでしょう。
しかし、実際の現場では「同僚と協力すべきか、それとも自分の成果を優先すべきか」と悩む場面に直面することも少なくありません。
例えば、プロジェクトの締め切りが迫る中で、自分の作業に集中するか、同僚を手伝うかといった葛藤です。
このような状況でどのような判断をするかは、チーム全体の成果にも大きな影響を与えます。
実はこの葛藤は、経済学や社会心理学で知られる「囚人のジレンマ」と呼ばれる理論で説明することができます。
本記事では「囚人のジレンマ」についてご説明した上で、短期的な自己利益よりも、チームでの長期的な信頼と協力を優先した方が成果につながることを解説します。
「囚人のジレンマ」とは?
「囚人のジレンマ」とは
ゲーム理論の代表的なモデルの一つ。
元々は2人の囚人の取り調べを題材にした思考実験で、お互いに協力したほうが本来は軽い刑で済むにもかかわらず、自分だけ裏切ったほうが得をするという誘惑があるために、結果として双方が裏切り合ってしまうというジレンマ。
参照:囚人のジレンマ – Wikipedia
簡単に言えば、各自が自分の利益だけを考えて行動すると、全員にとって損な結果に陥ってしまう状況を「囚人のジレンマ」というのです。
「囚人のジレンマ」では、相手を信頼して協力するか、それとも自分の利益を優先して裏切るかという選択が常に問題になります。
興味深いことに、理論上は自分勝手な行動が有利に思えても、お互いが信頼し協力し合うことで初めて最大の成果が得られるのです。
新人が直面する「囚人のジレンマ」的状況
ビジネスの現場でも、囚人のジレンマに似た状況がしばしば起こります。
特に新入社員の皆さんが葛藤を覚えることの多いケースを紹介します。
- 情報共有 vs. 個人プレー
新しい業務の中で得た知識やノウハウをチームに共有するか、それとも自分だけの強みとして胸に秘めておくか、迷う場面があるでしょう。
もちろん、お互いが情報共有すればチーム全体の問題解決力が上がります。
しかし、「自分だけ知っていたほうが有利ではないか」と考えて共有を渋れば、他のメンバーも同じように振る舞い、結果的にチーム全体の成長が阻害されかねません。 - 協力して助け合う vs. 自分のタスクに専念
同期のメンバーが業務に苦戦しているときに、手を差し伸べてサポートするか悩むことがあるでしょう。
自分の時間を割いてまで助けるのは一見損に思えます。
しかし、互いに助け合う文化があれば、いざ自分が困ったときにも支え合えるはずです。
逆に「自分の仕事で精一杯」と全員が助け合いを避けてしまうと、困難に直面したときに誰からも支援が得られずチームとしての成果が落ちてしまう可能性があります。
新人同士やチーム内で「協力か、それとも自己優先か」の選択に迫られる場面は、まさに囚人のジレンマの構図と言えます。
しかし、自己優先を続けた場合どうなるでしょう。
チーム内から孤立しやすくなってしまうだけでなく、チーム全体の信頼感が損なわれかねません。
信頼関係の薄いチームで働くことは、チームワークの低下や業務の停滞につながるケースが多く、それはチームメンバー一人一人の評価に如実に影響を与えるでしょう。
短期的には自分本位の行動が得に見えても、長期的に見ると信頼関係を築き協力する方が大きな利益を生むことを、ぜひ知っておいてください。
どうすればチームワークを向上させられるのか?
では、新入社員の皆さんがジレンマを乗り越え、チームワークを発揮するためにはどうすればよいのでしょうか。
また、上司や先輩はどのように新人の協力体制を支援できるでしょうか。
具体的なポイントを挙げます。
ご紹介するポイントを実践することで、チーム内に「お互い協力したほうが得だ」という雰囲気を醸成しやすくなりますよ。
一人ひとりが相手を信頼し、自分も信頼に応えようとすることで、囚人のジレンマに陥りにくい強いチームが生まれるのです。
1.共通の目標を共有する
チーム全員で目指すべきゴールを明確にし共有しましょう。
全員が同じ方向を向いていれば、「皆で協力して達成しよう」という意識が芽生え、個人プレーの誘惑を抑えることができます。
2.積極的にコミュニケーションをとる
日々のミーティングや報告・連絡・相談(報連相)を通じて、お互いの状況をオープンに共有しましょう。
コミュニケーションが活発になれば、「自分だけ苦労している」、「他の人はサボっているのでは」という不信感が生まれにくくなります。
3.信頼関係を構築する
小さなことでも構いませんので、約束を守る・助け合いの姿勢を見せるなど、日頃から信頼を積み重ねましょう。
一度に深い信頼を築くのは難しいですが、長期的な関係を視野に入れて少しずつ信用を得ていくことが大切です。
上司や先輩も、新人が安心して協力できるよう心理的安全性の高い職場環境を整えることが求められます。
4.協力を促す仕組みを作る
チーム内の協力を促進する制度や仕組みを活用しましょう。
例えば、チーム単位で成果を評価・表彰する制度があれば、自然と互いに助け合うインセンティブが生まれます。
逆に、明らかに協力を怠ったり他人の成果を横取りするといった不公平があれば、上司が適切に指導・フィードバックを行いましょう。
公正な評価とフィードバックは、メンバーが安心して協力できる土台となります。
まとめ
短期的な自己利益よりも長期的な信頼と協力が最終的に大きな成果をもたらすという教訓を、私たちは「囚人のジレンマ」から学ぶべきなのでは無いでしょうか。
新入社員の皆さんにとって、目先の損得にとらわれず、チーム全体の成功に目を向けて行動することは自身の成長にも直結します。
そして上司・先輩にとっても、新人が協力しやすい環境を作ることがチーム全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。
互いに支え合える職場やチームでは、「協力した方がみんなが得をする」という実感が共有されます。
その積み重ねが強固なチームワークを生み、結果として組織全体の目標達成や業績向上にも寄与するのです。
ぜひ日々の業務で「囚人のジレンマ」の教えを思い出し、信頼と協力を大切にした行動を心がけてみてくださいね。
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