

「仕事が溜まってそうですね。手伝いましょうか?」
親切心から声をかけた一言が、部下の表情を曇らせてしまったことはありませんか。部下の残業や疲れを察し、良かれと思って手を差し伸べたのに、なぜか不機嫌な態度をされてしまったり、距離を置かれてしまったりして、戸惑う上司の方は少なくありません。
部下を思った善意が拒絶される理由は、上司からの善意のメッセージに、部下が無意識のうちに「自律性を奪われた」と感じ、反発が生まれてしまったことにあるかもしれません。
本記事では、
・「救助のIメッセージ」の4ステップ
・相手の傾向にあわせた言葉の選び方
について解説します。ただ仕事を代わるのではなく、部下を尊重しながら適切に支えるためのステップを学ぶことで、部下は安心してあなたに心を開き、あなたの存在が部下の成長の成長を支える要となることができるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
「Youメッセージ」の落とし穴
なぜ、「手伝いましょうか?」などの上司の純粋な善意からの支援が拒絶されてしまうことがあるのでしょうか。
原因の多くは、上司が無意識のうちに「あなた」を主語にした「Youメッセージ」を使っていることに起因するかもしれません。
部下が大量の業務を抱えて毎日遅くまで残っていた。上司が善意で

「その量は一人では難しいですね。自分も半分やりますよ。」
と声をかけた。しかし、部下は心のなかで

「自分に任せてくれないの?」
とストレスを感じてしまった。
このケースでは、上司が「あなたには任せられない」とけして思っていなくとも、「あなた」を主語にしたYouメッセージを使ったことで、部下には「あなたはできない」、「あなたはこうすべきだ」と伝わってしまったのではないでしょうか。結果として、部下は「自分は信頼されていない」と感じてしまい、モチベーションを下げてしまいました。
YouメッセージやIメッセージについてはこちらの記事で詳しく説明しています。合わせてぜひご一読下さい。
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「救助のIメッセージ」で部下を支える
そこでぜひ知っていただきたいのが「救助のIメッセージ」です。
「私」を主語にし、相手の主体性を尊重しながら支援を申し出るアプローチで、相手のいま困っている状況を尊重しながら支えるメッセージを「救助のIメッセージ」といいます。
効果的な「救助のIメッセージ」の4つのステップを紹介します。
- 観察した事実
- 私の感情(心配など)
- 支援の意図(味方でいたい)
- 選択を相手に委ねる(主体性の保持)
「救助のIメッセージ」を使って残業続きの部下に声をかけるとすると、

「最近、抱えている業務量が増えていますね。(事実)
表情を見ていて少し心配しています。(感情)
必要なら一緒に業務を整理することもできますよ。(支援)
どう進めたいですか?(選択)」
のようになります。ポイントは、最後に「決定権を相手に委ねる」ことです。
自分で決めたことであれば、部下は自尊心を傷つけられることなく、素直に上司の支援を受け入れることができるでしょう。(自己決定理論)
「助ける」とは、代わりにやってあげることではなく、相手が折れないように「支える」ことだとぜひご自身の定義を考え直してみてくださいね。
自己決定理論についてはこちらの記事で詳しく説明しています。合わせてぜひご一読下さい。
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部下の認識スタイルにあわせた言葉の選び方
「救助のIメッセージ」をさらに効果的にしていく方法を紹介します。それは、 部下の「認識スタイル(思考のクセ)」を理解することです。
「認識スタイル」が理解できると、「救助のIメッセージ」のポイントである「選択肢の出し方」を相手に合わせることができ、相手の心の響くメッセージを届けることができるのです。
認識スタイルとは:
仕事における物の見方・考え方・行動のクセのこと。48種類のスタイルがある。
ここでは、48種類ある認識スタイルのなかから、「救助のIメッセージ」を構成するときに役立つオプション型とプロセス型を解説します。
人は困ったとき、「選択肢が欲しい」と感じる方と、「手順が知りたい」と感じる方に分かれる傾向があります。
1. オプション型(選択肢重視)
オプション型の方は、選択肢があると意欲が上がり、柔軟な発想が得意な傾向があります。
オプション型の方に「まずはこれをやって」「こういう手順がいいと思いますよ」と手順を押し付けると、自由を奪われたと感じ、縛られた感覚になりストレスを感じやすくなります。

「最近同時にタスクを抱えていて心配しています。(事実・感情)
必要なら一緒に整理することもできますよ。(支援)
A案とB案、どちらのやり方が進めやすいですか?(選択)」
と、複数の選択肢を提示し、本人に選んでもらう形が響きやすいでしょう。
2. プロセス型(手順重視)
プロセス型の方は、決まった手順や段取りが明確だと安心し、曖昧な指示や丸投げは苦手な傾向があります。

「最近タスクの順番が見えづらく、負荷が大きそうで心配しています。(事実・感情)
必要なら一緒に整理できますよ。(支援)
まずこれを確認して、次にこれをやって、この手順で進めていくのも良いのではないでしょうか。(選択)」
と、具体的なプロセスを提示し、提示した流れで良いかを確認するのが響きやすいです。逆に、「A案とB案のどちらがいいか」といった選択肢を出されると、判断基準が曖昧で手順がわからないため、不安になってしまうことがあります。
もし部下の傾向が分からない場合は、

「仕事をするとき、選択肢がある方が安心しますか?それとも手順が決まっている方が動きやすいですか?」
と直接聞いてみるのも一つの手段ですよ。
まとめ|「救助のIメッセージ」で部下の成長を支える
部下を「助ける」行為のゴールは、部下の仕事を代わりに終わらせることではなく、部下が自らの力で歩み続けられるよう「支える」ことにあります。
仕事が立て込み、疲弊している部下に対して「力になりたい」と感じたときこそ、部下の主体性を奪わずに味方であることを伝えられる「救助のIメッセージ」を活用してみてくださいね。
観察→感情→支援→相手の認識スタイルにあわせた選択肢の提示
が救助のIメッセージの要諦です。
まずは明日、部下の様子を観察し、「少し心配しているんだ」というあなたの率直な感情を届けることから始めてみませんか。最後に「どう進めたい?」と決定権を委ねるその一言が、部下の自尊心を守り、成長を支える支援へとつながっていきますよ。