

「職場の関係の質は随分向上した。でも、肝心の成果がついてこない……」
職場の関係の質を向上させることが、組織で成果を出す土台になることを、以前の記事で紹介しました。
上司「若手が守りに入って主体性が足りない」「会議で意見を求めても沈黙が続き、意見がでない」人事担当者や経営幹部の皆様から、上記のような組織の閉塞感に関するご相談をいただく機会が増えています。成果を上げようと戦略を見直し[…]
上司「指示したことしかやらない」「会議で問いかけても反応が薄い」そんな部下の姿に、もどかしさを感じてはいませんか?実は、組織が停滞する原因の一つは、土台となる「関係の質」の冷え込みにあります。上司が結果を急ぐあまり、現[…]
しかし、当然のことながら関係の質の向上は成果の土台に過ぎません。成果を出し続けるには、仕事の属人かを防ぎ、メンバー個人の性格やセンスに委ねてきた「行動」を、誰でも再現可能な形に設計し直す必要があるのです。
本記事では、
・仕事の属人化を防ぎ、行動の再現性を高めるための4つのステップ
・行動の質を高めるための3層のKPIマネジメント
について解説します。個人の能力に依存しない「強いチーム」の作り方を紹介します。ぜひ最後までお読みください。
「関係の質」が向上しているのに成果が出ない組織の課題
組織開発に取り組み、心理的安全性や関係の質を高めることに成功した人事担当者や経営幹部の皆様の多くが、次に直面するのが成果の壁です。ダニエル・キム氏が提唱する「成功の循環モデル」では「関係の質」が成果の土台になると考えられています。
成功の循環モデル:
関係の質が行動と思考を変え、その積み重ねが結果をうみ、結果がさらに関係の質を強めるという循環を示したモデル。

しかし、関係性が良くなっただけでは、組織づくりはまだ道半ばです。次のステージに進んで成果を出すためには、部下一人ひとりの「行動の質」を揃え、組織としての再現性を高める設計が不可欠になります。
多くの組織で、「同じ指示を出しても、Aさんは丁寧だが遅い、Bさんは早いが雑だ」というような行動のバラつきを「個人の性格だから仕方ない」と放置してしまっている現状があります。実は、行動のバラつきは性格の問題ではなく、「行動基準が共有されていないこと」が原因である場合が多いのです。基準がないまま個人の感覚に任せている限り、品質もスピードも担当者のコンディション次第となり、組織の力は分散したままとなってしまいます。
属人化を防ぎ、行動の再現性を高める4つのステップ
メンバー一人ひとりの行動は勝手には揃わないため、行動の再現性を高めるにはリーダーや上司・管理職による意図的な設計が必要です。以下の4つのプロセスを通じて、組織の行動基準を統一をはかってみてくださいね。
Step 1:行動を明確化する
上司の「もっとがんばれ」、「効率的にやれ」などの抽象的な指示では、部下はどう動いて良いか迷い、自己流の解釈で動いてしまいます。かといって多くの仕事を頼みすぎると部下が混乱してしまうため、やるべき行動を「3つ以内」に絞って伝えるのがおすすめです。

「会議資料は前日17時までに共有してください。」
など、具体的なアクションを提示しましょう。あれもこれもと詰め込むと、部下は消化不良を起こして動けなくなりやすいです。まずは重要なアクションを3つだけ伝えるのを徹底してみましょう。
Step 2:フィードバックの設計を変える
行動を変えるには、評価基準となるフィードバックの質も変えてみましょう。「良かったよ」という曖昧な感想ではなく、

「資料の構成案を先に見せてくれて良かったです!」
と、具体的な行動に対してフィードバックを行ってみてください。何が正解で、何が改善点なのかを言語化して伝えることで、部下の行動は洗練されていきますよ。
Step 3:認識スタイルを理解して伝え方を調整する
部下の「認識スタイル」に合わせたアプローチをぜひ行ってみてください。
認識スタイルとは:
仕事における物の見方・考え方・行動のクセのこと。48種類の認識スタイルがある。
部下に同じ行動を求めても、響く言葉は人によって異なります。今回は48種類ある認識スタイルのうち、仕事における行動への関わりが大きい認識スタイルを2つ紹介します。
目的志向型: 目的や背景がわかると行動に移しやすい傾向がある方です。

「この部分の説明ができたら資料は完成です。」
「次のこのプロジェクトの達成のための説明資料です。」
など、先に目的やゴール・期待する正解のイメージをセットで伝えると行動してくれるようになるでしょう。逆に、目的や背景がわからない指示だと、「何を目指しているかわからない」と行動しづらくなることがあります。
問題思考・回避型:リスクや失敗の可能性、抜け漏れなどに敏感な傾向がある方です。
問題思考・回避型の傾向が高い場合は、確認に時間をかけたり失敗しないよう慎重になったりして、行動が鈍くなりやすいです。しかし、危険を避ける強みもあるので、

「失敗しないために、まずは構成を見せてください。」
「資料はここをおさえれば大丈夫です。」
など、ステップを細かく伝えたり、一緒に考えたりして、安全基地をつくっておくと、慎重になりすぎる行動を後押しできますよ。
Step 4:振り返りサイクルを組み込む
行動はやりっぱなしでは定着しません。毎週数分でも構いませんので、

「今週できたことを教えてください。」
「改善したいところはありますか?」
「次の一歩はどうしましょうか?」
と、行動を一緒に振り返る時間を設けましょう。上司が一緒に振り返ることで、部下の軌道修正が早まり、正しい行動が習慣化されますよ。
3層のKPIマネジメントで成果を出し続ける
行動の質を高めるために、ぜひ「成功の循環モデル」それぞれの指標についてKPIで考えてみてください。多くの企業は「売上」や「利益」などの「結果のKPI」しか見ない傾向があります。しかし、結果が出る前には「関係」と「行動」のプロセスがあるので、ぜひ「関係・行動」も加えた以下の3層のKPIでモニタリングしてみることがおすすめです。
- 関係のKPI: 相談件数、1on1の実施数、心理的安全性スコアを測るなど(組織の土壌が健全か?)
- 行動のKPI: 改善提案数、チェックリスト実施率、準備の質など(正しいプロセスを踏んでいるか?)
- 結果のKPI: 売上、顧客満足度、納期、品質など(最終的な成果)
「結果が出ない」と感じたら、上記3つの指標をKPIに落とし込み、確認してみてくださいね。関係・行動・結果の3層をKPIで状態を把握すると、問題の所在を早期に発見し、手遅れになる前に的確な手が打てるようになりますよ。
まとめ
「成功の循環モデル」をまわす最後のピースは、具体的な「行動の質の設計」です。関係性が深まり、思考が前向きになっても、具体的な行動が伴わなければ組織としての変化は生まれません。反対に、行動が揃って基準が明確になれば、チームの迷いは消えていくでしょう。
行動の質を揃えるためにぜひ、行動の再現性を高める4つのステップ
・行動の明確化
・評価基準となるフィードバックの質を改善する
・部下の「認識スタイル」を理解する
・振り返りの習慣をつける
を実践してみてくださいね。加えて、関係・行動・結果の3層をKPIで評価することも大切です。
まずは明日、部下に求めている行動を「3つ」にしぼって伝えることから始めてみませんか。求める行動の言語化がメンバーの背中を押し、力強い成果を安定して生み出す第一歩となりますよ。