ゴードン博士の「やってはいけない12の型」で見直す、信頼ベースの関わり方

上司

「若手がなかなか育たない」
「指示待ちが多く、受け身に感じる」
「報連相が減った気がする」

こうした声を、現場でマネジメントを行う方からよく伺います。

お話を詳しく伺うと、背景には育成する側の関わり方のクセがあるようです。
部下のやる気やモチベーションを引き出すには、報酬や目標設定だけでなく、心理的安全性の確保と相手を尊重する対話が欠かせません
特にZ世代・ミレニアル世代の若手は、一方的に教えられるよりも、対話しながら考えたい、共感されたいと感じる傾向が強い傾向にあります。
したがって、従来型の上意下達的なマネジメントが通用しにくくなっているのです。

従来のマネジメントが通用しない昨今、再注目されているのが臨床心理学者トマス・ゴードン博士が提唱した「やってはいけない12の型(The Dirty Dozen)」です。
本記事では、人材育成や研修設計に携わる方々に、やってはいけない12の型の実践的な活かし方をご紹介します。

世代間ギャップが引き起こすバッドサイクル

部下の育成に関わる多くの上司は、

上司

「成長してほしい」
「ミスを減らしたい」
「早く成果を出してほしい」

といった前向きな意図を持っています。
しかし、その善意が空回りし、かえって部下のやる気や自律性を削いでしまうケースも少なくありません。

例えば「普通こうするよね」という上司にとっての”当たり前”を伝える声掛けを考えてみてください。
上司にとっては効率的な指導のつもりでも、部下にとっては

部下

「考える余地がない」
「否定されている」

と感じられ、心を閉ざすきっかけになってしまいかねません。

特に世代間ギャップが顕著な職場では、上司が育ってきた時代の”当たり前”が、若手には通じないことが多々あります。
価値観のズレに気づかずに接してしまうと、関係の質が悪化し、思考の質・行動の質・結果の質も低下していくバッドサイクルに陥りやすくなるのです。

ゴードン博士が示した「やってはいけない12の型」

トマス・ゴードン博士は、人間関係における無意識の破壊的パターンを「12のNG対応」として分類しました。
以下は、部下育成の現場でありがちな具体例とともに整理したものです。

型の名前 上司のよくある発言 部下の受け止め方
命令・指示 「とにかく急いで」 考える余地がなく、やらされ感が強まる
脅す・警告 「次ミスしたら外すぞ」 萎縮し、挑戦意欲が低下
説教する 「社会人としての自覚が足りない」 責められていると感じ、反発心が芽生える
すぐ助言する 「こうやればいいよ」 話を聞いてもらえていないと感じる
論破する 「その考えはおかしいよ」 否定されたと感じ、意見を言わなくなる
批判・非難 「やる気がないんじゃないか?」 自分の存在が否定されたように感じる
表面的な称賛 「いいね〜さすが!」 本質的な評価でないと見抜かれる
レッテル貼り 「君は慎重すぎるよね」 固定観念を押しつけられたと感じる
皮肉・からかう 「お、奇跡的にできたね」 バカにされたと感じ、心を閉ざす
分析・決めつけ 「結局、自信がないだけだろ?」 話を聴かれずに決めつけられたと感じる
気休め 「まあまあ、大丈夫だよ」 深刻さをわかってもらえない
質問攻め 「なんで?どうして?」 詰問のように感じ、本音を話さなくなる

どれも無意識にやってしまいがちなものばかりですが、「やっていけない」対応が積み重なることで、部下の報連相や行動量が減少する傾向があるのです。

グッドサイクルは関わり方から始まる

無意識にやってしまいがちなコミュニケーションを打破するために、

の連鎖にぜひ注目してください。
部下が

部下

「安心して話していい」
「自分の意見を尊重してくれる」

と感られる関係性を上司が築ければ、部下の心理的安全性は確保されていくでしょう。

心理的安全性とは:
「どんな意見を言っても罰せられない。」と感じられる職場環境を作ること。
参考:ResearchGate「Psychological Safety, Trust, and Learning in Organizations: A Group-level Lens

心理的安全性が向上すれば、部下の思考の深さや、主体的な行動が自然と育ち、最終的に成果にもつながりますよ。
特にZ世代の若手社員は、指示待ちを嫌う一方で、自分の考えを尊重されたいという価値観を持っています。
だからこそ、部下のやる気を引き出すには、まず「聴く」こと。
アドバイスを急がず、本人の考えを引き出す対話こそが、モチベーションを支えるカギとなります。

まとめ:関わり方を変えれば、育成の成果が変わる

ゴードン博士の「やってはいけない12の型」は、部下のやる気と信頼関係を損なう悪気のない関わりに光を当てる、極めて実用的なフレームです。
マネジメントの本質は、成果を出させることではなく、成果が出る状態を整えること
そのために必要なのは、高圧的な指導ではなく、心理的安全性と相手を尊重する対話です。
世代間ギャップを感じる職場こそ、指導スタイルのアップデートは待ったなしです。
育成がうまくいかないと感じたときは、ぜひ一度ご自身の声かけや関わり方を振り返ってみてください。
部下が変わるきっかけは、あなたのたった一言から生まれますよ。

出演情報

代表 高村が、NHK『ニュースウオッチ9』に出演し、世代間ギャップの現状と世代間ギャップ研修についてコメントしました。【登場者】代表取締役 高村 幸治(たかむら こうじ)【番組名】ニュースウォッチ9【内容】世代間ギャップについて[…]

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