

「部下がなかなか本音を話してくれない」
「部下が指示待ちの姿勢から抜け出せない」
優秀な上司や経営幹部の方々ほど、部下育成や組織のエンゲージメント向上に日々課題を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
実は、部下についての課題の背景には、皮肉にも上司自身の「豊富な経験」と「責任感」が、部下との対話の障壁となってしまっているケースが少なくありません。
本記事では、部下の心理的安全性を高め、自律的な成長を促すための「真の傾聴力」について深く掘り下げていきます。
単なるコミュニケーションのテクニックではなく、
・部下の話を聴く姿勢
・自分の意識の焦点を部下の正解に向け直す
の視点を取り入れたマネジメント手法です。
部下との信頼関係を再構築し、組織全体の対話力を底上げするための具体的な視点と実践方法を紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
上司のアドバイスが部下の思考を停止させてしまう理由
部下から相談を受けた際、最後まで話を聞く前に

「それはこういうことですね」
「私の経験ではこうすればうまくいきましたよ」
と、解決策を提示した経験はありますでしょうか。
実績のある上司であればあるほど、過去の成功体験から素早く正解を導き出す能力に長けているものです。
しかし、対話においては「早すぎる解決」が、部下の意欲を削ぐ要因となりかねません。
上司が自身の経験則に基づいて即座に回答を示すと、部下は

「自分の話を最後まで聞いてもらえなかった」
「自分の考えや気持ちを受け止めてもらえなかった」
と、感じてしまったり、消化不良感が残ってしまったりするのです。
さらに、常に上司が正解を与える状況が続くと、部下は

「言われた通りにすればいい」
と感じるようになり、自ら思考し、課題を解決しようとする力を失ってしまう恐れもあります。
善意で行っているアドバイスや迅速なトラブルシューティングが、結果として部下の主体性を奪い、本音を語らない関係性を作ってしまっている可能性があるのです。
「知っている」という前提を手放す
部下の内面にある本当の思いや、現場の潜在的な課題を引き出すために、上司自身の「知っている」という前提を意図的に手放していただくことをおすすめしています。
具体的なステップを紹介します。
STEP1:自分の経験は一旦脇に置いておく
部下の話を聞いている最中に、「あのパターンだな」と過去のデータと照合してしまうクセを、意識的に一時停止させてみてください。
STEP2:好奇心を持って話を聴く
目の前にいる部下の感情や価値観に焦点をあて、「部下のなかにはどんな世界があるのだろうか?」と、好奇心をもって話を聴いてみてください。対話が深まっていきます。
STEP3:沈黙(間)を活用する
部下が沈黙した場合も、先回りして言葉を埋めるのではなく会話の間を共有してみてください。沈黙を「考えを整理し言語化しようとする時間」と捉え、急かさず話を聴くことが部下にとっての安心感につながります。
上司自身が

「自分はすべてを知っているわけではありません」
と認める謙虚さが、部下の安心感へとつながり、深い対話への入り口となりますよ。
意識の焦点を「自分」から「相手」へ向け直す
対話の質を変える鍵は、意識の焦点を意識的に「自分」から「相手」へ転換することです。
具体的なステップを紹介します。
STEP1:問いかけの起点を自分から相手へ変える
多くの上司の方は部下から相談を受けると自分の経験を元に話をしがちです。
もちろん経験は重要な資産ですが、部下から相談を受けている際の課題の所有者は部下自身です。ぜひ

「何がおきてそうなったと思いますか?」
「そのとき、どういう気持ちでしたか?」
など、部下の内側にある情報を聴くことからスタートしてみてください。
STEP2:フィードバックではなく探索で会話を設計する
部下と会話をする際「ここを改善しましょう」、「自分ならこうする」と、フィードバック(評価・指導)しようとする姿勢から、ぜひ探索(理解・共感)しようとする姿勢へ切り替えてみてください。

「もしまた同じことが起きたら、どうすれば安心できたと思いますか?」
など、部下の視点を広げるような問いかけを投げかけてみてください。
部下にとって話しやすい雰囲気が醸成されますよ。
上司の役割は、部下が自力で解決できるよう支援することにあります。対話の起点を相手の内側に置くことで、部下は

「自分に関心を持ってもらえている!」
「尊重されている!」
と感じ、自己肯定感を高めることができます。
結果として、現場の小さな違和感やリスク情報なども、早い段階で上司に共有されるようになり、組織としての危機管理能力や改善スピードの向上にもつながっていきますよ。
まとめ|「真の傾聴力」が組織を底上げする
真の傾聴とは、単に耳を傾けるだけでなく、上司自身が過去の成功体験や思い込みを一度リセットし、相手の視点に立って世界を見ようとする能動的な行為です。
・「知っている」という前提を手放すこと
・意識の焦点を相手に向けること
は、長年の経験がある方ほど難易度が高い挑戦かもしれません。
意識的に自分の判断を脇に置き、部下の思考を探索するような対話を重ねることで、部下は自ら答えを見つける力を養い、組織全体の信頼関係はより強固なものへと進化していきます。
小さな改善を重ね、ぜひ組織の大きな成長へとつなげていってくださいね。