

「まさか、あのエースが……」
優秀な人材から突然の退職届に、言葉を失った経験はありませんか?さらに恐ろしいのは、一人の離職が引き金となり、主力メンバーが次々と去る「連鎖退職」の悪夢です。本記事を読むことで、
・優秀な人材をつなぎとめる退職の動機を見極めるスキル
・部下一人ひとりのやる気の源泉を見極めるスキル
を学べます。部下を「成果」だけで判断するマネジメントを卒業し、一人ひとりの「やる気のボタン」を正しく押す方法を習得しましょう。
「努力が報われない」と感じさせる組織構造の正体
メンバーが次々と辞めていく事態は、人事担当者や経営幹部の方にとって頭が痛い問題ですよね。優秀なメンバーが退職する背景には、単なる給与や待遇への不満だけではなく、

「ここでは自分の努力が正当に報われない」
と感じさせてしまう組織特有の構造的問題が潜んでいる可能性があります。
成果を出す人材ほど、さらなる成長や裁量を求める欲求が強い傾向にあります。しかし、組織や上司が部下の内面的な欲求を理解せず、画一的なマネジメントを行ってしまうと、彼らは静かに失望し、より良い環境へと旅立ってしまうのです。
優秀層の離職が招く問題と組織の課題
優秀なメンバーの退職が組織に与えるダメージは、単なる欠員補充のコストにとどまりません。さらに問題なのは残された人材の間で起こる「共感の伝染」と「心理的安全性の崩壊」です。
組織の課題1:共感の伝染
成果を上げていた優秀な人材が会社を去る姿を見て、他のメンバーも冷静に分析を始めます。

「あの人が辞めるということは、この会社には未来がないのかもしれない」
と会社の未来を悪い方向に考えてしまうケースがあります。
組織の課題2:心理的安全性の崩壊
優秀な人材が辞めると、周りの人材は

「この組織はがんばっても報われないのか」
と考えてしまい、士気の低下につながりやすくなることがあります。
上記のような悪循環を防ぐためには、一人の離職を個人の問題として片付けるのではなく、組織全体の構造的な課題として考え直す必要があります。
優秀な人材ほど、自分を深く理解してくれている上司のためならば、多少の困難があってもがんばろうとしてくれる傾向があります。離職防止の第一歩として、上司自身が部下の内面に関心を寄せ、部下が

「自分は理解されている!」
と感じられるような安心感の再構築を組織全体で目指しましょう。
「マクレランドの欲求理論」の活用で離職を防ぐ
部下の内面の理解と離職の問題を考えるうえで有効なのが、心理学者デイビッド・マクレランドが提唱した「マクレランドの欲求理論」です。
マクレランドの欲求理論:
人の行動を動機づける要因を「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」の3つに分類した理論。
- 達成欲求が強い人:
高い目標の達成や、自身のスキルアップ、競争に勝つことに喜びを感じる傾向にあります。明確な数値目標や、行動に対する具体的なフィードバックを与えることで意欲が高まります。 - 権力欲求が強い人:
組織内での影響力や責任ある地位、プロジェクトを任せられると意欲があがる傾向があります。プロジェクトのリーダーを任せたり、戦略的な意思決定に関与させたりすることで力を発揮します。 - 親和欲求が強い人:
人との良好なつながりに意欲を感じやすいです。信頼関係が構築できているか、チームの一体感を重視します。
マクレランドの欲求理論の傾向のそれぞれに「良い」「悪い」はありません。重要なのは上司にも部下にもそれぞれ「欲求」があることです。上司が部下の欲求の傾向を理解せず上司の欲求にあわせ一律で指導をすると、上司と部下の間で考え方にズレが発生ししてしまいます。例えば、
「親和欲求」の強い上司が、「達成欲求」の強い部下に対して「みんなのためにチームワークよくがんばろう!」と声をかけた。上司にとっては励ましのつもりであったが、自分自身の成長を重視する部下は「自分の目標達成には関係ない」と受け取ってしまい、モチベーションを下げてしまった。
「達成欲求」の強い上司が、「親和欲求」の強い部下に「結果がすべてだ」と数字ばかりを追求してしまい、部下は「殺伐とした雰囲気だ」「チームワークがない」と心が折れてしまった。
など、上司と部下の間で考え方にズレがあると、チーム内の不和がうまれ、最終的に離職につながりかねないのです。
優秀な人材をつなぎ止めるには
・上司がまず自分自身の傾向を知ること
・「マクレランドの欲求理論」のうち、部下が何の欲求タイプを持っているのかを見極めて関わり方を調整する
ことが大切です。
離職を防ぐマネジメントための構造改革
優秀な人材が辞める企業の共通点を紹介します。人材辞める理由の多くは仕組みにあり、具体的には以下の3つに分られます。
- 成長実感を得にくい評価制度
- 挑戦よりも安定を評価する文化
- 上司が「成果を出す人」を早く次の仕事に回してしまう配置運用
上記の3つが揃うと、優秀な人材は「この会社ではこれ以上伸びないのではないか」と感じる可能性があります。
人材が辞めてしまう仕組みや構造を変えるために、以下の3つのステップで現状の構造を見直してみてはいかがでしょうか。
ステップ1:離職パターンの見える化
過去数年間の退職データを振り返り、退職理由を分類します。個人的な事情を除き、
「評価制度への不満」
「人間関係のミスマッチ」
「成長機会の欠如」
の3つの項目に分けて分析し、自社の離職パターン(=構造的な弱点)を見える化します。
ステップ2:1on1で「何があれば続けたいか」を聞く
現在活躍している人材との1on1で、
「この会社で働き続けたいと思う条件は何か」
「今後3年間で実現したいことは何か」
を問いかけ、組織の成長軸と重ねていきます。
ステップ3:評価と配置の一部を「本人のモチベーションの軸」に合わせて再設計する
マクレランドの欲求理論に合わせて、活躍の場を用意します。例えば、
「達成欲求」が高い人材には難易度の高い目標と短期的な評価を与える
「権力欲求」が高い人材にはリーダーシップを発揮できるポジションを用意する
「親和欲求」が高い人材にはメンター役やチームビルディングの役割を任せる
のように、画一的な人事制度ではなく、個々の欲求に合わせた柔軟な運用で、優秀な人材を離さない仕組みをつくることが離職防止の本質です。
まとめ|部下への深い理解が離職を防止する
優秀な人材ほど辞めるのではなく、「職場で自分のことが理解されないから辞める」のではないでしょうか。日々の業務のなかで積み重なった「理解されていない」という感情のズレが、「この会社にいても未来がない」という感情を引き起こし、静かに離職のカウントダウンが始まるのです。
ぜひ、「マクレランドの欲求理論」を参考に部下の欲求を探ってみてくださいね。自分自身の傾向を知るだけでなく、部下のこともしっかり理解し、歩み寄ることからはじめるのがおすすめです。
そのうえで、離職を防ぐマネジメントための構造改革の3つのステップを実践してみてください。
・離職パターンを可視化する
・部下のモチベーションの源泉と組織の成長軸を重ね合わせる
・マクレランドの欲求理論に合わせ、活躍の場を用意する
ことが大切です。上司が部下の内面を深く理解し、欲求に応じた関わり方を実践すれば、組織の信頼関係は強固なものになるでしょう。
部下への理解あるマネジメントこそが、優秀な人材の退職を食い止める鍵となるはずです。