

「何度言ったら、自分で考えて動くようになるんだ……」
若手社員の指示待ち姿勢に、疲れている上司や管理職の方もいらっしゃるでしょう。本人の性格だから仕方ないと諦めるのは簡単ですが、指示待ちは部下が発している組織の不全を知らせるSOSかもしれません。指示待ちは個人の資質ではなく、実は上司の関わり方や職場の風土が生み出した結果の場合があります。
本記事では、
・「指示待ち」の部下がうまれるメカニズム
・自律性を引き出すためのマネジメント法
について詳しく解説します。動けない部下を「自ら動く戦力」へ変えるための新しい視点と具体的なアプローチが手に入るでしょう。ぜひ最後までお読みください。
「指示待ち」状態の部下がうまれるメカニズム
EdWorksの調査では、6割以上の管理職が部下育成に悩みを抱えている結果が出ました。また、Googleの研究では心理的安全性の低いチームは成果が少ないことが示されています。
部下育成に悩みを抱える上司の存在と、心理的安全性の低いチームの成果が少ないという事実は、指示待ち部下が生まれる背景と深く関係しています。
「指示待ち」状態の部下がうまれるメカニズム
上司が部下育成に迷い、判断がぶれる
→部下の働きを承認する機会が減る
→働きを認められることの少ない部下は、自分の仕事に自信が持てなくなる
→部下は失敗を恐れ、自分で判断することが難しくなる
部下は怠けているわけではなく、失敗を恐れるあまり、どうしたら良いかと上司に正解を求め、指示待ちをする行動パターンが定着してしまった可能性があります。

「上司の意見がすぐ変わる。何か言われたら動けばいいかな。」
「指示待ち」の心理的背景
部下が指示待ちになってしまう心理的背景を3点紹介します。以下の理論を理解すると、マネジメントの改善点が見えてくるかもしれません。
自己決定理論の崩壊
人が自律的に動くためには以下の3点が満たされる必要があると言われています。
自己決定理論とは:
人間が自律的に動くには
・自律性=自分で選びたいと感じる気持ち
・有能感=自分はできると感じる気持ち
・関係性=信頼されていると感じる気持ち
の3点が満たされる必要があるとする理論
つまり、以下のような自己決定ができない環境におかれると、人はモチベーションが下がりやすく、自律的に動きづらくなってしまうのです。
・細かすぎる指示や監視に晒されている:「自律性」を奪われたと感じやすい
・成果だけをみられる:過程を見てもらえず「有能感」が下がりやすい
・相談しづらい空気がある:「関係性」が崩れやすい
心理的安全性の欠如
心理的安全性とは:
チームや組織の中で失敗やミス、さらには異なる意見を口にしても否定や非難を受けず、安心して発言や行動ができる状態のこと
参考:ResearchGate「Psychological Safety, Trust, and Learning in Organizations: A Group-level Lens」
「これを言ったら否定されるかもしれない」という不安がある限り、部下は自律的には動けません。話しかけづらい無言の圧力が、指示待ちの要因の一つです。
組織で新しいアイデアを生み出したり、メンバー同士が協力しながら困難を乗り越えたりするためには、互いに安心して意見を交わせる環境が大切です。そうした「安心感」を生み出す概念として注目されているのが、心理的安全性です。心理的安全性の定[…]
プログレス原理が働いていない状態
プログレス原理とは:
人は「少し進んだ実感」でモチベーションが上がるとされる心理効果
上司は部下の業務が完了したときだけ褒めるのではなく、途中の小さな進捗に光を当てることが大切なのです。プロセス(過程)が見過ごされると、部下はゴールまでの長い道のりで迷子になり、立ち止まってしまいかねません。
部下の自律を奪う3つの悪習
多くの職場で無意識に行われている、指示待ちを助長し、自律性を奪う悪習を3点紹介します。
1. 目的が不明瞭な指示をしている
「明日までにこの資料を作って」のように、背景や目的を伝えずに作業だけを依頼していませんか。作業の判断基準になる「何のために」が抜けていると、部下は混乱して指示待ちになることがあります。

「この資料を作って何をするんだろうか……?」
2. 上司から部下に一方的に質問をしている
上司から「分かったか?」と聞かれたら、部下は反射的に「はい」と答えてしまうことが多いのは、皆さんにもご想像いただきやすいでしょう。質問しづらい空気から、部下は「理解したフリ」をしてしまい、思考が止まってしまうことがあるのです。

「わからないと言ってもどうせなにも変わらないから、取り合えずわかったふりをしておこう……」
3. 細かすぎる指示を出している
良かれと思って「まずはこれ、次はこれ」と手順を細かく指定して伝えすぎていませんでしょうか。細かすぎる指示は、

「どうせあとから修正されるから、自分で決めなくてもいいかな……」
と誤学習させてしまうこともあります。考えるより待つほうが安全になってしまい、結果として指示待ちになってしまうことがあるのです。
上司「なぜ、言われたことしかやらないのか」「もっと自分で考えて動いてほしい」指示待ちの若手を前に、もどかしさをを感じている経営幹部や管理職の方は少なくないでしょう。指示を出しても期待通りに動かない部下を見ると、どうして[…]
まとめ|部下が動きやすい環境をつくる視点に立ったマネジメントを
「指示待ち」は性格の問題ではなく、構造と心理が重なった結果として起きる現象です。「指示待ち」に見える部下も、実は「やる気はあるが、動けない」だけなのかもしれません。
まずは、部下の性格を変えようとするのではなく、部下が動きやすい環境を作ろうという視点に切り替えてみてはいかがでしょうか。
・指示を出すときは目的を明瞭に示す
・一方的な質問ではなく対話を重視する
・指示を出す際は、部下が自主的に考えられる余地を残す
ことが鍵となります。マネジメント側が変わると、チームが一気に動いていきますよ。ぜひ試してみてくださいね。