コーチングで部下が動かない理由|部下の土台を作るティーチングと、自律性を引き出すコーチングのバランス

上司

「部下の主体性を高めるためにコーチング研修を導入したが、現場では思ったように機能していない」

人材育成に熱心な人事担当者や経営幹部の皆様から、上記のようなお悩みを伺う機会が増えています。長い時間をかけてコーチング研修を行い、コーチング手法を学んだはずなのに、なぜ現場では活かされないのでしょうか。
実は、コーチングが機能しないのは、上司や管理職のスキル不足ではなく、育成での「関わり方の構造(順番)」にズレが生じているからかもしれません。
土台となる「型」がない部下にコーチングで「内省」を求めても、部下は混乱し自信を失うだけです。本記事では、

・「守・破・離」の考え方を用いたマネジメント手法
・部下の成長フェーズに合わせた育成の黄金比率

を解説します。本記事を読めば、部下が迷わず自走し始めるための正しい関わりの順序が明確になりますよ。停滞していた育成の突破口を開き、組織全体のパフォーマンスを底上げするため、ぜひ最後までお読みください。

「守・破・離」に学ぶコーチング

まず、人材育成で使われる「ティーチング」と「コーチング」の違いを整理しましょう。

ティーチングとは:
上司が持っている知識やスキル、業務の「型」を教えること。上司が答えを持っており、答えを部下に手渡して部下の「できる」を増やす行為。

コーチングとは:
本人のなかにある答えを引き出すこと。問いかけや対話を通じて考える力や自律性を高める行為。

ティーチングは行動の型を整える、コーチングは心の動機を呼び覚ます、と考えていただくと理解しやすいかもしれません。
ティーチングとコーチングはどちらかだけでは機能しません。両者の関係性は、日本古来の「守・破・離」のプロセスで考えると理解しやすくなります。

  • 守(シュ): 師匠の教えを忠実に守る
  • 破(ハ): 師匠の教えをもとに、自分なり考えて型を破る
  • 離(リ): 自分の型を築きあげる

茶道の稽古では、

  • 守(シュ): 師匠の所作を寸分違わず真似る(ティーチング)
  • 破(ハ): 「なぜこの所作があるのか」「どうすればより美しく見えるのか」を考える(コーチング+ティーチング)
  • 離(リ): 自分の表現や哲学を「茶」に込める(コーチング)

のように例えられます。作法を知らない初心者に、いきなり「あなたらしくお茶を点ててごらん」と問いかけても、相手は困惑するでしょう。

人材育成でも、まずは「守」の段階で徹底的に型をインプットするティーチングがあってはじめて、「破」「離」の段階で個性を引き出すコーチングが機能します。つまり、「良いティーチングなしに、良いコーチングは生まれない」のです。

部下の成長フェーズにあわせた人材育成

次に、現場でティーチングとコーチングを使い分ける方法を解説します。重要なのは、目の前の部下が現在どのフェーズにいるのかを見極めることです。

ティーチング:基礎を教える(新人)

業務の全体像や基礎知識を持たない新人の層に対しては、ティーチングに比重を置く必要があります。「守」の段階として、「業務の目的を伝える→手順や内容を確認する→まとめる」の順番で上司の「型」を教えるのです。(ティーチング)
部下は「どうしたい?」といきなり意向を聞かれても、基礎がないので考えるための材料がなく、答えに詰まって焦ってしまいます。

上司

「業務の目的はここにありますよ」
「まずはこの手順で進めてみましょう」

と、明確な方向性と安心を提供し、土台をつくって小さな成功体験を積んでもらいましょう

コーチング:内省と自律性を育てる(中堅以降)

ある程度業務をこなし、「守」の段階をクリアした部下に対しては、徐々にコーチングの比率を高めていきます。
部下が作成した資料に修正が必要な場合、単に「ここを直して」と指示するだけではティーチングに逆戻りしてしまいます。既に基礎を持っている部下は、自分のなかに答えや改善案を持っているでしょう。

上司

「今の完成度を100点にするには、どこを改善すれば良いと思いますか?」
「自分自身で気になっている箇所はどこですか?」

などの問いかけを行うことで、内省を促し、改善点や誤っていた点に部下自身が自分で気づくことができます。

「教える(ティーチング)」と「考えてもらう(コーチング)」の往復が、部下の自律性、すなわち考える力や判断する力、自己成長を引き出しますよ。

後輩指導に悩む部下へのコーチング術

組織のなかでは、後輩の育成に悩む部下もいるでしょう。

部下

「後輩に何度教えても伝わらない」
「後輩が思った通りに動いてくれない」

このような悩みを相談されたときこそ、上司によるコーチングが効果を発揮します。相談されたときに、「なぜうまくいかないのか?」と原因を問いただすのではなく、ぜひ「うまくいった例外」に焦点を当て、内省を引き出してみてください。

上司

「今まで指導してきたなかで、少しでも反応が良かったときはどんなときでしたか。」
「伝わった!と感じた瞬間、後輩はどんな反応をしていましたか。」

などの問いかけが有効です。100回指導して100回失敗することはありません。何回かは小さな成功体験が埋もれています。成功パターンを部下自身の言葉で言語化してもらうことで、

部下

「自分にはできる!」

という自己効力感を取り戻してもらうことができ、後輩育成を再現性のあるスキルへと昇華させることができるでしょう。

まとめ|コーチングで自律性を引き出す

コーチングがうまくいかないと感じるとき、それは手法の誤りではなく、土台となるティーチング不足が原因であるケースが少なくありません。部下の「守」がおろそかなまま「破」を求めていないでしょうか。基礎のない部下に「自分らしさ」を強要していないでしょうか。部下の現状を観察し、必要な「型」を丁寧に手渡すことから始めてみてくださいね。

・まずはしっかりとした土台を築く(ティーチング)
・土台が築けたら、内省を促し自律性を引きだす(コーチング)

ことが大切です。しっかりとした土台の上に築かれたコーチングは、部下のポテンシャルを最大化し、自ら考え行動する「自走する組織」を実現する強力な武器となりますよ。
まずは明日、部下への指示出しの際に「今は教えるときか、考えさせるときか」を一呼吸置いて考えてみてはいかがでしょうか。その意識の変化が、信頼関係と成果の両方を高める第一歩となりますよ。

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