

「エンゲージメント診断の数値はいいのに、なぜ離職が止まらないのか。」
組織の活性化度を測る指標としてエンゲージメント診断を導入する企業が増えています。
しかし、診断結果の数値は良好であるにもかかわらず、優秀な人材が相次いで離職してしまう事態に直面している経営幹部や人事担当者の方も少なくありません。
表面上の数値と現場の実態が乖離してしまう背景には、数値には表れにくい「静かな分断」が潜んでいる可能性があります。
本記事では、診断結果の裏側にある
・職場の実態を正しく読み解く方法
・上司と部下の関係性を再構築するための具体的ステップ
を解説いたします。
アドラー心理学やソリューションフォーカストアプローチを取り入れたリーダーシップを実践することで、組織の離職率低下だけでなく、自律的な意見が飛び交う強固なチームへと変革させることができますよ。
組織の真の健康状態を見極め、持続的な成長を実現するために、ぜひ最後までお読みくださいね。
表面的な平和に潜む「静かな分断」の正体
エンゲージメント診断の設問のなかには、特定の文化圏を前提とした指標も多く、日本企業の風土では正確なやる気が測定しづらい場合があります。
数値上は問題がないように見えても、会議で反対意見が出ず、決定事項に対して誰も心から賛同していないような状態は、心理的安全性が低下した典型的な「静かな分断」の姿といえます。
心理的安全性:
チーム内で自分の意見やミスを安心感をもって表明できる状態を指す心理的概念
アドラー心理学の観点では、人間関係が滞る原因の一つに「縦の関係」が挙げられます。
上司が評価し、部下が評価されるという固定的な上下関係が強まると、会話の内容は報告と命令に終始し、自由な意見交換は消失してしまいます。
指示待ちと遠慮の文化が定着すると、部下は本音を隠したまま、ある日突然離職を選択しかねないのです。
「静かな分断」を解決するためには、上司と部下が共に目標へ向かう「横の関係」=「対等な仲間」としての信頼を再構築しなければなりません。
個人の組織マネジメントや人材育成の現場では、社員のモチベーション向上やチームワークの強化、心理的安全性の確保が重要な課題となっています。多くの組織の課題に対するアプローチの一つとして、アドラー心理学が注目されています。アドラー心理[…]
信頼を回復するリーダーシップ
組織の見えない壁を取り除き、風通しの良い環境をつくるためには、リーダーが自ら現場へ働きかけることが必要です。具体的な3つのアクションを紹介します。
少しずつ実践することで、関係性の温度を確実に高めることが可能になりますよ。
1. 見えている景色の違いを共有する
立場が変われば、組織の課題の見え方も異なります。上司は「順調だ」と感じていても、現場の部下は「言語化できない苦労」を抱えている場合があります。
両者の認識のずれを埋めるために、ぜひ「景色共有ミーティング」を実施してみてください。
景色共有ミーティング
STEP1:書き出す
「上司として見えている課題」「現場で感じる課題」をそれぞれA4一枚に書く
STEP2:聴き合う
「なぜそう感じたのか?」など、反論ではなく書かれた課題を理解するための質問をする
STEP3:重なりを探す
「ここは同じ景色ですね」という共通点を見つける
指導する側・される側という枠組みを超え、共通の目的を持つ、共に改善する仲間として現状を直視することが、分断を埋める第一歩となります。
2. 心理的安全性を段階的に構築する
上司が「本音で話そう!」と呼びかけるだけでは、部下の警戒心は解けません。
部下にとっての否定されない「安心の場」をつくる必要があります。
「安心の場」づくりのステップ
STEP1:雑談を戦略的に入れる
問題ではなく成功の兆しに焦点をあて、「解決志向」の対話を積み重ねる
STEP2:リーダーが聴く姿勢をみせる
部下の話を評価せずに受け止める
STEP3:ルールを可視化する
「否定や評価を一切しない時間とする」など、この場のルールを明確にし、ホワイトボードなどに書いておく
「安心の場」づくりの際には、ぜひ認知スタイルにも気を配ってくださいね。
例えば、部下が意思決定をするときの判断基準が「自分の基準で決める」傾向なのか、「他者の基準を尊重するのか」か見極めることは、より深い対話につながります。
一人ひとりの思考スタイルに合わせた問いかけを行うことは、心理的安全性を高めることにもなりますよ。
部下の判断基準にあわせた育成方法については以下の記事でもご紹介しています。
部下が迷っているとき、「こうすればいい」と答えを与えたくなるのは自然な行為です。特に時間がない場面では効率的に見えますが、日常から正解を示す習慣が続くと、部下が自分で判断する力を失い、組織全体の成長機会を逃すことにつながりかねませ[…]
3. 本音を見せる勇気で信頼を育む
リーダーが弱さを見せることは、チームの助け合いを生む強力なチャンスとなります。
具体的なステップは以下の通りです。
上司が部下に本音を見せるためのステップ
STEP1:迷いを言葉にする
STEP2:助けを求める
STEP3:感謝を伝える
全知全能のリーダーを演じるのではなく、

「この部分は自分も迷っているんです。」
「詳しいあなたに助けてほしいです。」
「助かりました!ありがとうございます!」
と正直に開示することで、部下は自らの能力を発揮する機会を得たと感じ、貢献意欲が高まりますよ。
上司の人間味のある姿こそが、部下の心を開く鍵となります。
まとめ|「静かな分断」を防ぐリーダーシップ
組織の真の強さは、診断結果の数値そのものではなく、その数字の背景にある人間関係の質に宿ります。
リーダーに求められるのは数字を読む力ではなく人の関係を読み解く力です。
・立場の違いを共有する「景色合わせミーティング」
・本音を言える関係を育てる「安心のルール作り」
・弱さを見せる勇気で信頼を生む「人間らしいリーダーシップ」
上記のプロセスを丁寧に進めることで、表面的な平和を超えた、信頼の再構築へと変わっていくのです。
まずは次の会議で、「正直なところ、この進め方で良いか迷っている」と一言添えて、周囲の意見を求めてみてください。
リーダーが見せる小さな勇気が、チーム全体に安心感を与え、停滞していた組織の空気を大きく変えていきますよ。
組織に信頼の輪が広がり、優秀な人材がその能力を最大限に発揮し続けられる環境が整うことを願っています。