なぜ優秀な部下ほど辞めていくのか|行動特性から見る離職の背景と対策

多くの企業で繰り返し耳にするのが、「優秀な若手が突然辞めてしまう」という悩みです。
表向きの理由は「キャリアアップ」や「新たな挑戦のため」などの前向きな言葉ですが、背景には個人の資質や働き方の相性だけではなく、組織の制度・文化に根差した深い要因が隠れている場合があります。
人事担当者や経営幹部にとって、若手の早期離職を「本人の意思」だけで片付けてしまうのは危険です。
根本的な原因を放置すると、同じような離職が繰り返され、採用・育成にかけた時間やコストが無駄になってしまうからです。

本記事では、行動特性の切り口から離職の背景を整理し、

・行動重視型の人材の特徴
・思考重視型・慎重派の人材の特徴
・行動重視型・思考重視型それぞれの人材を戦略的に活かす方法

の3つのポイントで説明します。
優秀な人材の定着と活躍を両立させるための組織設計について考えていきましょう。

行動重視型の人材の特徴

行動重視型の人材は、チャンスを見つけると即座に動き、実行の中で改善を重ねて成果を出すことを好みます

行動重視型

「なぜ待つ必要があるのか」
「まずは試してみよう」

といった言葉に象徴されるように、スピードと試行を重視するのが特徴です。

どんどん行動したい!という特性は、新規事業の立ち上げや市場開拓の局面では大きな力になります
しかし、複数段階の承認を経る稟議制度、前例や慣習を重視する意思決定プロセス、失敗に厳しい評価文化などが根強く残る企業では、どんどん行動する特性が抑え込まれやすくなってしまうのです。

ある若手営業担当者が新しい営業手法を提案したものの、「前例がない」「リスクが高い」などの理由で却下されてしまった。
その若手はすぐに転職をし、転職先で同じ手法を用いて成果を出した。
元の企業では「あの人材を手放すべきではなかった」という声が後から上がった。

というケースを耳ににしたことがあります。
まさに、行動重視型の人材が早々に離職を決め、組織が不利益を被った事例といえるでしょう。

厚生労働省「令和4年雇用動向調査」でも、20代の転職理由として「能力・個性・資格を活かせない」が上位に挙げられています。
行動重視型の人材が組織文化や制度に適合できず、外に活躍の場を求める構造的な問題を示唆しているのではないでしょうか。

思考重視型・慎重派の人材の特徴

行動重視型の人材がいる一方で、じっくり考えてから動く慎重派の人材も組織にはいますよね。
思考を重視するスタイルを持つ人材は、開始前の十分な準備を重視し、リスクを慎重に検討してから行動する傾向があります。

思考重視型

「もう少し検討が必要」
「時期を見極めたい」

といった発言が多く見られます。
じっくり考えるスタイルは責任感や分析力として評価されやすく、特に日本企業では「丁寧で確実な業務遂行」として好意的に受け止められる傾向があります。
しかし、慎重さが過ぎると、市場の変化や競合の動きに対応しきれないリスクも生まれます。

新商品開発の場面で市場テストの提案があったが、テストは慎重に進めるべきとの意見を採用し、テストを先送りにした。
1年後に競合他社が先行発売してしまった。

慎重にすめることは、安定性は確保できても、スピードが求められる局面では機会損失につながってしまう場合もあるのです。

慎重型は組織のリスクヘッジや品質確保に不可欠な存在ですが、慎重な人材だけの組織では変化への適応力が不足する場合があります。
特に市場が急速に変化する現代では、慎重さと迅速さの両立が求められるのです。

行動重視型と思考重視型のすれ違い

行動重視型と思考重視型は、判断スピードや価値観が大きく異なるため、同じチームにいると摩擦が生じやすくなってしまうことは、皆さんにもご想像いただきやすいかと思います。
行動重視型は思考重視型を「腰が重い」と感じ、思考重視型は行動重視型を「計画性がない」と受け止めがちです。
ここでぜひ考えて欲しい問題は、行動重視型は思考重視型のどちらか一方のスタイルを「正しい」として組織の制度や評価を設計してしまうことです。
多くの企業では思考重視型・慎重派が標準的な評価軸として制度化され、行動重視型は評価されにくい状況が固定化している現状があります。
その結果、行動重視型の優秀な人材は離職し、組織は思考重視型中心となってしまうのです。
思考重視型中心の組織では、革新性が損なわれ、変化への対応力が低下してしまいます
単なる人材流出の問題ではなく、中長期的な競争力の低下にも直結してしまうのです。

行動重視型と思考重視型の特性を活かす組織設計

行動特性の異なる人材を戦略的に活かすには、認知的多様性を前提にした制度と環境の構築が欠かせません。
両者の強みを補完し合うための具体的なアプローチを紹介します。

  1. 並行処理システムの導入
    従来の順次処理の業務の勧め方ではなく、行動重視型には小規模な実験プロジェクトを任せ、思考重視・慎重型にはその結果の分析や改善提案を担当してもらう方法です。
    スピードと精度の両立が可能になりますよ。
  2. 時間制限付きチャレンジ制度
    一定期間と予算内で自由に試行できる枠を設け、失敗を学習機会として評価します。
    行動重視型が力を発揮しやすくなると同時に、組織としてリスクを制御できます。
  3. 相互補完チーム編成
    異なる特性を持つメンバーを意図的に組み合わせ、互いの強みを活かす編成を行います。
    MITの研究よれば、多様性の高いチームは同質的なチームと比べ、問題解決能力が約30%向上するとの報告があります。(「Social Physics」2014年)

制度導入時の留意点

新しい施策を導入する際には、評価制度の見直しが重要です。
行動重視型には「チャレンジ回数」や「学習速度」、慎重型には「分析の質」や「リスク予測精度」など、特性に応じた評価軸を設定してみてください。双方が自分の強みを発揮しやすくなりますよ。

また、日常のコミュニケーションにも配慮が必要です。
行動重視型には「具体的に明日何をしますか?」と問いかけ、慎重型には「どのようなリスクが考えられますか?」と尋ねるなど、相手に合わせたアプローチを試してみてくださいね。

まとめ

優秀な部下が辞めていく背景には、本人の資質ややる気だけでなく、組織が多様な行動特性を十分に活かせていない構造的な要因があります。
行動重視型と思考重視型、それぞれの強みを認め合い、組織設計に戦略的に反映することで、人材定着と変化対応力の向上を同時に実現できますよ。
さまざまなスタイルの人材の強みを活かし合える組織をつくることは、単なる離職防止策ではなく、組織の競争力を高めることにつながる長期的な投資となります。

人事担当者や経営幹部こそ、さまざまな人材の強みを活かす視点で制度設計や評価基準を見直すことで、ぜひ、より持続的で活力のある組織づくりをすすめてくださいね。

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部下育成にお悩みの方や組織改善を目指している方は、どうぞお気軽にご相談くださいね。

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