

「しっかり傾聴しているつもりなのに、部下はそう思っていないようだ。」
という上司の方からの声をしばしば伺います。
上司の方が部下の話をよく聞くように努めているつもりでも、残念ながら部下が「聞いてもらえた」と感じていないケースは多いものです。
本記事では、傾聴が誤解されやすい理由や、十分に傾聴できていない職場で起こる問題、そして傾聴力を高めるための実務的な工夫をまとめました。
読み進めることで、
- 部下の本音を引き出し、課題を早期に共有できる組織をつくれる
- 面談や会議の質が高まり、意思決定の精度が向上する
- 信頼関係が深まり、心理的安全性の高いチームづくりに近づく
などのメリットが得られますよ。
明日からの会話にすぐに活かせる内容です。ぜひ最後までお読みください。
傾聴とは何か
傾聴とは「耳を傾け、心で聴くこと」を意味します。
単なる情報収集ではなく、相手の立場や感情の背景に注意を向け、理解する姿勢そのものです。
心理学には「理解されていると感じると、さらに深い情報を語りやすくなる」という知見があります。
つまり、傾聴は信頼関係を築き、成果につながるコミュニケーションの出発点といえるのです。例えば、部下が

「最近仕事がきつくて…」
と話し始めたときに、上司が

「気合いが足りない」
と返してしまうと、当然部下は

「理解されていない」
と感じてしまいます。
部下が理解されていないと感じた瞬間に、相談は途切れ、その後も部下は本音を言わなくなる可能性もあるのです。
また、上司が他のことをしながら話を聞いたり、視線が頻繁に部下以外の場所にうつったりしているなど、部下の話に注意が向いていない状態が積み重なると、部下は「上司を聞いてくれない人」と認識するようになってしまいます。
傾聴の際は、ぜひ目の前の部下に集中するようにしてくださいね。
傾聴のよくある誤解
傾聴には、特に2つの誤解がつきまといます。
誤解①:傾聴は黙って頷いていればよい
部下の話を黙って聞くことと傾聴は、まったく別の行為です。
面談で上司が頷いてはいるものの、表情が硬く、メモも取らず、視線も動かない状態では、部下は

「評価されている」
「裁かれている」
と感じやすく、話を聞いてもらったことによる安心感にはつながりません。
誤解②:相手に同意することが傾聴だ
傾聴とは同意ではなく、理解の姿勢です。

「なるほどね」
「そうだね」
と相槌だけを打つ場合も注意が必要です。
相手の発言に対する同意の言葉は、内容を理解していなくても言えてしまうため、部下からすると

「話を聞き流されている」
「面倒くさいのかな」
と受け取られてしまうことがあります。
若手が新しいアイデアを伝えた際に、上司が「いいね」と返して終わる場面が典型です。部下は

「真剣に考えてもらえていない」
と感じ、発言意欲を失う可能性さえあるのです。
傾聴できない職場で起きる問題
傾聴が不足すると、組織には二つの深刻な影響が生じます。
1.本音が語られなくなる
部下は、一度

「どうせ聞いてくれない」
と感じると、表面的な報告しかしなくなる傾向があります。
売上の低下要因や顧客の反応など、本来共有されるべき情報が隠れたまま進むため、問題が深刻化したあとにようやく明らかになるケースさえあるのです。
2.信頼関係が損なわれ、成果が下がる
聞く姿勢の乏しい上司のもとでは、部下は

「自分の意見は大切にされていない」
と感じやすくなります。
上司の傾聴不足が原因で若手の離職率が高まってしまった例もあります。
安心して発言できる環境にいないと、部下の心理的安全性は確保されづらくなります。
すると、挑戦意欲もおさえ込まれ、静かにチーム全体の成果が下がっていってしまうのです。
傾聴力を高める3つの工夫
傾聴は特別なスキルではありません。
職場で取り入れやすい日常の工夫を3点紹介します。
工夫①:相手の言葉を「確認して返す」
部下から何か話されたとき、上司が「つまり、こういうことですね?」と要約して返すだけで、

「理解してもらえている!」
という安心感が部下の中に芽生えます。
部下が「最近、顧客の反応が悪くて…」と相談したときも、上司が

「顧客の声に元気がない感じがしている、ということですね?」
と返事をする。このたったひと言が、会話の深さを大きく変えますよ。
工夫②:非言語情報に注意を向ける
表情、声のトーン、姿勢、視線など、言葉以外のサインから真意を読み取れるよう意識しましょう。
部下が「大丈夫です」と言いながら視線を逸らす場合は、本心では大丈夫でない可能性があります。
耳だけではなく、目や心を使って聴くことが傾聴では重要ですよ。
工夫③:判断を急がず、話を聞き切る
改善提案の途中で上司が「コストがかかるから無理」などと遮ると、部下は

「話しても無駄だ」
と学習してしまいます。
まずは部下の話を最後まで聞ききる姿勢を持ちましょう。
待つ姿勢が傾聴の質を決定するのです。
認識スタイルが傾聴力に影響する
人は情報の受け取り方や判断基準に「クセ」を持っています。
認知心理学ではこの「クセ」を「認知スタイル」と呼びます。
知覚の違い
「どこから情報が入ってきたら理解・納得しやすいのか」のクセは人それぞれ違いがあります。
- 視覚型:図や資料で理解しやすい
- 読解型:文章やレポートがあると安心する
- 体感覚型:現場体験で納得する
- 聴覚型:声や会話で理解しやすい
傾聴の力は、聴覚型の傾向を持つ方が活かしやすい力といえます。
他の知覚の傾向を持った方は、それが悪いと言うわけではまったくありません。
ぜひより意識して、相手の話を聞いたり、相手の言葉を確認したりするようにしてくださいね。
判断基準の違い
人は誰もが物事を判断するときの基準をもっています。
- 内的基準型:自分の基準に引っ張られやすく、相手の話を遮りやすい
- 外的基準型:相手の意見を尊重しやすく、傾聴と相性が良い
傾聴の力は、他社の判断基準を尊重する傾向が強い人が活かしやすいといえるでしょう。
自分自身の基準を強く持つ方は相手の考えを遮りやすい傾向があるので、意識して相手の話をしっかり聞ききるようにしてみてくださいね。
まとめ|傾聴は信頼と成果を生む組織の基盤
一言で傾聴と言っても、ただ単に話を聞くだけでなく、工夫してしっかり最後まで聞ききる必要があることをご説明してまいりました。
ポイントは以下の3点です。
- 傾聴は耳を傾け、心で聴く行為であり、黙って聞くことや同意することとは異なる。
- 「確認して返す」「非言語を拾う」「判断を急がない」よう工夫する。
- 認識スタイルの観点から、しっかり聞き、相手の基準を尊重する意識を大切にする。
傾聴が深まることで、部下の本音が語られ、課題の共有が早まり、意思決定の質が高まりますよ。
そして結果として、組織の心理的安全性の向上につながり、挑戦を生み出す風土が醸成されていくでしょう。
ぜひ明日の会話から、一つだけでも意識を変えてみてくださいね。小さな工夫の積み重ねが、大きな組織の力になりますよ。
エナジーソースでは、組織の成長を支援しています。
部下育成にお悩みの方や組織改善を目指している方は、どうぞお気軽にご相談くださいね。