

「かわいがっていた育てた部下が、退職代行サービスで辞めてしまった。」
人事担当者や経営幹部の皆様にとって、退職代行サービスを使って辞意を表明されることほど、残念な気持ちでいっぱいになることはありませんよね。
株式会社マイナビの「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」によると、企業の約4社に1社が退職代行を使われたことがあり、20代の転職者の5人に1人が利用しているようです。
本記事では、退職代行が行われる現象に潜む「組織の対話不全」という本質的な課題を取り上げ、社員が安心して働ける心理的安全性の高い組織をつくるためのヒントをお伝えします。
読み進めていただくことで、
・退職を「裏切り」ではなく「卒業」と捉えるマネジメント
・感情に流されず建設的に対応するスキル
が得られます。ぜひ最後までお読みください。
「対話回避」の背景にある心理と組織構造
調査では、20代の転職者が退職代行サービスを利用した理由は、「引き止められることへの懸念」や「上司との感情的な対立の回避」であるとされています。
本来であれば、退職の相談は上司と部下の間で行われる最後の重要な対話であるはずです。しかし、欧米のように自己主張が当たり前の文化とは異なり、日本では「辞める」と言い出しにくい空気が職場に蔓延しているケースが少なくありません。

「相談してもどうせ状況は変わらない」
「不利益を被るかもしれない」
「恩を仇で返すのかと詰め寄られるのが怖い」
上記のような諦めや不安が積み重なった結果、社員は精神的な負担を最小限にするために、コストを払ってでも「対話回避」を選択するのです。
つまり、退職代行サービスは、使われる組織が「対話不可能な状態」に陥っている問題を示唆しています。
「もうこの会社には、直接話すだけの心理的安全性も期待も残っていない」という、痛烈なメッセージとして受け止める必要があるでしょう。
組織が退職代行を使われるリスク
退職代行を利用された際、組織が被るダメージは人員の損失だけにとどまりません。
さらに深刻なのは、残されたメンバーへの心理的な影響と、組織文化の崩壊です。
何も言わずに去っていく同僚を目の当たりにしたメンバーは、

「辞めるときは逃げるように去るのが賢い選択なのかもしれない」
といった認識を持つ可能性があります。
また、会社側が退職者に対して裏切り者といった敵対的な感情を露わにすれば、社内の空気は悪化し、エンゲージメントは著しく低下してしまうでしょう。
最悪の場合、「人を大切にしない会社」と評判が立ち、採用ブランディングにおいても「ブラック企業」のレッテルを貼られかねません。
退職を「裏切り」から「卒業」へ
重要なのは、退職代行を使わせないように圧力をかけることではありません。
退職代行を使う必要がない組織へと生まれ変わることではないでしょうか。
退職を「裏切り」と捉える古い価値観を捨て、社員の新たな門出を応援する「卒業」と捉える新しいスタンスへと転換することが求められます。
今すぐ取り組むべき3つのステップを紹介します。
1.「卒業対話」ガイドラインの策定
退職の申し出があった際、上司が感情的にならずプロフェッショナルとして対応するためのマニュアルやガイドラインを整備しましょう。
部下に対して感情的にならず、法律を遵守しつつ、建設的に対話を進めるための行動規範を準備するのです。この準備は、上司を守ることにもつながります。
ガイドラインには、
・相談してくれたことへの感謝と労いを伝える
・「引き留め」ではなく、部下の「キャリア支援」のための傾聴を行う
・いつ、どのような手順で退職手続きを進めるかを明確化する
など、上司が迷いなく部下の未来を応援できるような情報を盛り込みましょう。
2.部下の「心理的債務感」を生まない関係性を築く
日本の組織に根強く残る

「育ててやったのに」
などの意識は、部下にとって重たい「心理的債務」となり、健全な対話を阻害します。

「今まで貢献してくれてありがとう。次のステップも応援します。」
とさらりと送り出せる組織でいられるよう、日常からフラットな関係性を築いていきましょう。
3.「アルムナイネットワーク」の構築を図る
退職した社員を「二度と関わらない人」にするのではなく、社外の協力者(アルムナイ)としてネットワーク化する動きが加速しています。
良好な関係で送り出すことができれば、将来的にビジネスパートナーになったり、再び自社に戻ってきたする可能性も生まれます。
「辞めた後も大切にしてくれる会社」という評判は、最強の採用広報にもなります。
退職を縁の切れ目ではなく関係性の変化と捉え直すことが、人的資本経営における新たなスタンダードとなりつつあるのです。
まとめ|「対話不全」を解消し、離職を「卒業」に変える
退職代行サービスからの通知が届くことは、決して気持ちの良いものではありません。
しかし、それを「組織の対話不全」を知らせるシグナルだと捉えれば、組織をより良くするための転換点になり得ます。
・社員を責めるのではなく、対話ができなかった構造を見直す
・退職を「裏切り」ではなく「卒業」として送り出す文化を醸成する
上記を実践することで、組織の心理的安全性は高まり、結果として今いるメンバーの定着率やモチベーション向上などの大きなメリットをもたらすでしょう。
まずは社内で「退職」に対する捉え方を話し合い、ポジティブな送り出し方を設計することから始めてみてくださいね。