

「ミスを指摘したいが、辞められたら困る」
「注意しただけで距離を置かれた」
腫れ物を扱うようなマネジメントに疲れてはいませんか?ハラスメントと訴えられる懸念から、かつては当たり前に行われていた「叱る・指導する」行為をためらう上司の方が増えています。しかし、表面的な「優しさ」は、組織の成長を止め部下が成長する機会を奪っているかもしれません。本記事では、
・「叱れない上司」と「打たれ弱い部下」が増えている背景
・心理的安全性を職場で育むためのヒント
について解説します。上司が部下を信じて失敗や誤りを伝える勇気をもつことで、心理的安全性が向上し、結果として組織の生産性の向上につながります。組織の停滞を打破するため、ぜひ最後までお読みください。
「打たれ弱い部下」が増えている背景
現代の上司の世代と大きく違う社会構造のなかで育ってきた若手は、上司の世代の方々から見ると「繊細だ」、「打たれ弱い」と感じてしまう部分もたしかにあるでしょう。
しかしそれらの問題は個人の資質や性格が原因なのではなく、育ってきた社会環境の結果に過ぎないのです。現代の若手がおかれている環境を解説します。
失敗を悪いものだと認識させられている
現代の若手は、あらかじめ用意された正解を効率よく導き出すことを重視した教育環境で育ってきました。その結果、正解がない問いに挑むことや失敗から学ぶ経験が不足したまま社会に出るケースが増えています。
彼らにとって、教育課程で染み付いた「失敗=悪」という固定観念を払拭するのは容易ではありません。だからこそ、「失敗=価値ある学びのチャンス」へと意識をアップデートできる環境を整えることが、職場で自律する人材を育てる第一歩となるのではないでしょうか。
SNSで常に即時評価に晒されている
若手を取り巻く環境において、SNSの影響を無視することはできません。彼らは常に「いいね」の数によって即時に評価が可視化され、否定的な反応を過剰に恐れる心理的土壌に身を置いて成長してきました。期待したほどの「いいね」が得られないこと自体を、自身の存在否定や承認の欠如と捉えてしまう傾向もあります。
自分自身の納得感(自己受容)よりも他者からの評価を優先する「外的承認への依存」が高まっていることが、失敗を極端に避け、正解だけを求める姿勢に拍車をかけている一因といえるでしょう。
職場に世代間ギャップが生じている
厳しい環境で揉まれて育った団塊世代やX世代と、対話や共感を重視する教育を受けてきたY世代やZ世代との間で、世代間ギャップ(ジェネレーションギャップ)が生じている組織も少なくないでしょう。
厳しい環境を当たり前だと感じる上司が

「最近の若手は打たれ弱い」
と見限り、対話や共感を大切にする部下が

「この上司は古い」
と心を閉ざすことで、相互理解の機会が失われていく悪循環に陥ってしまっているのです。
上司が生まれ育った環境の構造的な背景を無視し、「厳しくすれば育つ」という過去の成功体験に基づいた育成を続けても、現代の若手には響きません。むしろ、心理的安全性や承認を欠いたアプローチは、部下の離職や組織からの離脱を加速させる決定打となってしまうでしょう。
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心理的安全性を正しく理解したマネジメント
人材育成の場で重要になるキーワードが心理的安全性です。Googleの研究によって注目された概念ですが、日本では「何を言っても許される」「厳しくしなくて良い」など誤った解釈をされているケースがあります。
心理的安全性とは
チームや組織の中で失敗やミス、さらには異なる意見を口にしても否定や非難を受けず、安心して発言や行動ができる状態のこと
参考:ResearchGate「Psychological Safety, Trust, and Learning in Organizations: A Group-level Lens」
上司が部下に嫌われることを恐れ、必要な指摘やフィードバックを避けている状態は、心理的安全性ではなく「心理的静穏」に過ぎません。表面上は穏やかに見えても、その裏では本音が隠され、重大な問題が見過ごされているリスクを孕んでいます。
真の心理的安全性とは、対立を恐れずに意見を出し合える文化を指すのではないでしょうか。
上司が部下の顔色を伺い、必要な指導や軌道修正を放棄してしまえば、現場の小さなミスは見過ごされ、やがて組織を揺るがす致命的なトラブルへと発展してしまいます。
そして、上司の本当の優しさとは、部下を信じて失敗や誤りを伝える勇気をもつことではないでしょうか。部下のミスや失敗を指摘しないことや、オブラートに包んで伝えることが上司の優しさなのではなく、正しく伝え続ける。その繰り返しで、部下自身も

「この上司は、意見を言ってもしっかり受け止めてくれる!」
「この上司は、失敗しても改善策を教えてくれる!」
と感じることができ、心理的安全性を育む出発点となりますよ。
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まとめ|真の対話の実践が組織をつくる
「叱れない上司」と「打たれ弱い部下」の増えている背景にある時代の変化が生み出した構造的な課題です。しかし、時代が変わったからといって、人材育成を諦める必要はありません。
まずは、失敗を悪とするのではなく「失敗=学びの機会」になるよう、意識を変えてみましょう。「失敗しても大丈夫」という感覚が醸成されれば、部下は過度な防衛本能を解き、上司もミスや誤りを指摘しやすくなるでしょう。失敗を報告し、改善を繰り返せる職場こそが、心理的安全性の確保された職場といるのではないでしょうか。
表面的な優しさではなく対立を恐れずに本音で向き合う「真の対話」の実践が、生産性の高い組織をつくる土台となるはずです。
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