

「営業トップのプレイヤーを営業部長にした途端、チームの雰囲気が悪くなってしまった。」
組織の成長を支える一つの要因は、現場で圧倒的な成果を出す「優秀なプレイヤー」の存在です。
しかし、彼ら優秀なプレイヤーを管理職に登用した途端、チームの雰囲気が停滞したり、若手の離職が相次いだりしてしまったご経験はありませんでしょうか。
本記事では
・優秀な人材がマネジメントで壁にぶつかる根本的な要因
・優秀な人材が管理職として活躍するための具体的な育成ステップ
・多様なキャリアパスを構築するための視点
などの知見を紹介します。個々の能力を最大化し、離職を防ぐ強い組織づくりにお役立ていただけますよ。
人材の適材適所を実現し、次世代のリーダーを育てるためのヒントとして、ぜひ最後までお読みくださいね。
優秀な人材ほどマネジメントで失敗しやすい背景
営業成績トップの人材や、技術力の高いエンジニアを管理職に昇格させた際、期待に反してチームが崩壊してしまうケースが見受けられます。
このケースは、プレイヤーとしての優秀さと、管理職としての優秀さが、別の能力であることを示唆しています。
現場で成果を出してきた方々は、多くの場合、自身の努力や工夫で道を切り拓いてきた成功体験を持っています。
そのため、無意識のうちに

「自分ができるのだから、部下も同じようにできるはずだ」
という思い込みを抱いてしまう傾向があります。
部下が壁に突き当たった際、寄り添うよりも先に

「まずは自分で調べて、自力で解決すべきだ」
と突き放してしまうような関わり方は、部下を萎縮させ、心理的な距離を生む要因になりかねません。
また、日本の多くの組織では、長年の勤続を経て自然と管理職へ昇格する終身雇用制度の慣習が根強く残っています。
マネジメントに関する専門的な教育を十分に受ける機会がないまま、プレイヤーとしての延長線上で役割を担うことが、独善的なリーダーを量産してしまう構造的な問題といえます。
管理職に求められるのは、自身のやり方に固執するのではなく、部下それぞれの価値観や強みを尊重し、柔軟に吸収する寛容な姿勢なのではないでしょうか。
段階的なマネジメント能力の育成を行う
優秀なプレイヤーがいきなり多くの部下を抱える管理職へと転身することは、組織にとって大きなリスクを伴います。
ぜひ、いきなり管理職の役割を丸投げにするのではなく、「プレイングマネージャー」としての期間を設け、段階的なステップを用意して組織でじっくり育成していってください。
具体的なステップを紹介します。
STEP1:小規模チームのリーダー体験
まずは、2〜3名程度の小規模なチームでのリーダー体験から始めてみてください。
自身も現場で動きながら、同時に部下のサポートを経験するプレイングマネージャーの期間を設けることで、伝える・教える・任せることの難しさと重要性を肌で感じることができます。
STEP2:メンター制度の導入
経験豊富な管理職をメンターとして配置する仕組みも重要です。
週に一度程度、メンターとの定期的な対話の場を設け、管理職としての対人関係の悩みやマネジメントの戸惑いを一人で抱え込ませない環境を整えます。
STEP3:管理職スキル研修の必須化
実際に、管理職になる前に、
- 部下との1on1の進め方
- 褒め方・叱り方
- 目標設定・チームビルディング
- 状態チェックや悪天候時の対処
など、現場で起こりうるケースを想定した、ロールプレイを繰り返す実践型の研修を行っていきましょう。
最初の一定期間は失敗しても学び直せる期間として会社が保証し、じっくりとマネジメントの型を身につけてもらいましょう。
ポイント:
・優秀なプレイヤーを小規模チーム管理から段階的に引き上げる。
・メンター制度で「1人で抱え込まない」「困ったらすぐに相談」を定着させる。
・座学ではなくて現場対話とロールプレイ重視の実践型管理職を必須化し、失敗できる期間を保証する
「複線型キャリアパス制度」の導入
「昇進=管理職になること」という単一の評価軸しか存在しないことも、日本の多くの企業が陥る人事制度の落とし穴といえます。
「管理職=出世・成功」といった間違ったイメージをもとに組織運営がされる問題を解決するためには、管理職の道とは別に高度な専門性を評価する「複線型キャリアパス制度」の構築がおすすめです。
複線型キャリアパス制度:
1.「管理職として人を動かす道」
2.「専門職として技術や知識を極める道」
→2つのキャリアを並行して用意する仕組み
導入のステップを紹介します。
STEP1:専門職ポストを見えるかたちでつくる
専門職のなかにもスペシャリスト・エキスパート・マスターといった階級を設定してみてください。
例えば、技術スペシャリストなら課長相当、技術エキスパートなら部長相当として、専門を極めた人材が肩書きも報酬も管理職と同じレベルになるように制度を設計するのです。
STEP2:評価の物差しを変える
管理職はチームの成果や人材育成で評価し、専門職は知識の深さや技術革新、個人の力による事業への貢献度で評価するのです。
STEP3:キャリアを自分で選べる面談制度を導入する
キャリアを会社が一方的に決めるのではなく本人が選択できるよう、キャリアについての面談を設けることも重要です。
一度管理職になったら戻れないような不可逆な仕組みではなく、実際に経験してみたうえで、自身の適性に合わせてキャリアを再選択できる柔軟性を持たせるのです。
ポイント
・専門職にも管理職にも同等のポストを用意し、「もう1つのキャリアの頂点」をつくる。
・評価基準を分けてそれぞれの貢献を正当に認める。
・キャリアを自分で選べる柔軟な仕組みにする
まとめ:変化し続ける時代に求められる適材適所の視点
本記事では、優秀な人材を管理職として活かすための育成方法と、多様なキャリアを許容する組織設計について解説してきました。
プレイヤーから管理職への移行には、段階的なマネジメント育成とメンター制度を取り入れ、じっくり管理職のスキルを身に付けてもらうことが大切です。
また、専門性を極める道と人を動かす道の双方を正当に評価する仕組みを取り入れれば、各々の人材が自らの強みに基づいて挑戦し続けることができるようになります。
以上の取り組みの実践は、適材適所の人材配置へつながり、
・離職防止
・生産性向上
・変化に強いしなやかな企業体質の実現
を組織にもたらします。
部下一人ひとりの可能性を信じ、個性が輝く配置を追求することが、これからの時代における人材マネジメントの本質なのではないでしょうか。