

「部下がやる気を見せない」
「同じ指導をしても反応が人によって違う」
人事担当者や経営幹部の方であれば、現場から上記のような相談を受ける機会も多いのではないでしょうか。
やる気の有無を一律に判断してしまうと、適切な育成機会を逃し、関係性の悪化や離職につながる可能性もあります。
本記事では、部下のモチベーションを「性格」や「世代」で片づけず、正しく理解するための、
・やる気の3つの源泉
・人材一人ひとりのやる気の源泉を見極める視点
を整理します。
短い質問と観察ポイントをおさえるだけでも、声かけや役割設計の精度が上がり、組織の推進力が変わっていきます。
ぜひ最後までお読みくださいね。
やる気には3つの源泉がある
心理学の研究では、人の動機づけには達成・親和・権力の大きく三つの傾向があるといわれています。
心理学者デイヴィッド・C・マクレランドの研究:
人間のやる気を「達成・親和・権力」の3つの動機で説明。
動機づけ理論(欲求理論)を発展させたことで知られている。
「達成・親和・権力」はそれぞれ以下の要領です。
達成:成果や成功を手にすることを重視する傾向
親和:仲間意識や人とのつながりを重視する傾向
権力:責任や影響力を望む傾向
多くの管理職の方が陥りやすいのは、自分のやる気の源泉で部下を動かそうとしてしまうことです。
達成を重視する管理職が

「目標達成しよう!」
「達成で評価があがります!」
と伝えても、親和や権力の傾向が強い部下には響きにくい場合があります。
やる気の源泉のミスマッチが続くと、上司は

「この部下はやる気がない。」
と誤解し、部下は

権力重視の部下
「理解されていない」
と感じて距離がうまれてしまいます。
離職の理由として人間関係が挙がりやすい背景には、やる気の源泉のすれ違いも含まれている場合もあるのです。
3つのやる気の源泉を見極める質問と観察ポイント
やる気の源泉の見極めは、複雑な診断に頼らなくても進められます。

「仕事で一番充実感を感じるのはどんなときですか?」
と尋ねるだけで、手がかりが得られますよ。
重要なのは、本人に直接「やる気の源泉は何か」と聞くのではなく、質問への反応と言葉の傾向から推測し、関わり方を調整することです。
やる気の源泉が「達成」の人材の場合
部下に仕事の充実感について質問をしたところ、成果や成功の言葉を多用した場合、その部下は達成の傾向が強い可能性があります。
達成の傾向が強い人材は、「結果」「達成」「進捗」「改善」といった言葉を使いやすく、目標への距離が見えると動きやすくなります。

「いま、10点満点中何点くらいでしょうか?」
「もう1点あげるためには、どうしたらいいと思いますか?」
など、スケーリングの問いかけで進捗を数値化し、小さなゴールの達成を積み重ねるための行動を一緒に考える方法が有効です。
やる気の源泉が「親和」の人材の場合
仕事の充足感について質問をしたところ、人とのつながりやチーム内での仲間意識を大切にする言葉を応えた場合、その部下は親和の傾向が強い場合が多いです。
「一緒に」「みんなで」「協力」「支え合い」といった言葉を使いやすく、関係性の価値を再確認すると力が出やすくなります。

「チームのどの協力が成功に繋がったと思いますか?」
という質問で過去の成功要因を追求し、チームの協力の輪を広げる問いかけが役立ちますよ。
やる気の源泉が「権力」の人材の場合
仕事の充実感についての質問の結果、部下が人や組織への影響力を望む回答をした場合、その部下は権力の傾向が強い可能性があります。
「主導」「責任」「影響力」「意思決定」といった言葉を用い、影響の実感が行動のエネルギーになりやすい傾向があります。
権力がやる気の源泉である傾向の部下には、成功状態を明確化し、

「将来どのような影響を与える人物になりたいですか?」
と、将来像を具体化してもらうと意欲が高まりやすくなりますよ。
それぞれの質問の詳細については、こちらの記事をご参照ください。
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ポイント
・仕事の充実感を感じる場面を質問で引き出す
・使う言葉の傾向から源泉を特定する
・それぞれに適したコーチング手法を使い分ける
世代に縛られず、源泉の多様性を組織の強みにする
やる気の源泉は世代によって傾向が出る場合もあります。例えば、
Z世代やY世代など若い世代は、仲間意識を大切にする方が多いです。
一方、団塊世代などベテランほど、成果を重視する方が多いものです。
しかし、やる気の源泉に限らず、世代で決めつけると個人の特性を見誤りやすくなります。
成果重視のZ世代もいれば、仲間意識を大切にするベテラン世代もいるのです。
ぜひ、一人ひとりと対話を重ね、個人のやる気の源泉を丁寧に見極めるようにしてくださいね。
組織を活性化するためには、多様な源泉を組み合わせたチーム編成と役割の提供が効果的です。
- 達成の傾向が強い人材
→マイルストーン管理や品質基準達成の管理業務を任せる。 - 親和の傾向が強い人材
→部門間調整や情報共有の促進を担ってもらう。 - 権力の傾向が強い人材
→プロジェクトの推進役や意思決定の整理を任せる。
といった具合です。
役割が適合すると、それぞれの人材が自然とやる気が発揮していきますよ。
異なる源泉を持つ人材が協働することで、お互いの視点の学習が起き、チームの成長にもつながります。
ポイント
・世代の傾向はあくまでも参考程度に止める
・個人の源泉を丁寧に見極める
・多様な源泉をチームの強みとして活かす
まとめ|やる気の源泉を見極めることが人材育成の精度を上げる
部下のやる気を「ある・ない」で判断すると、見えにくい強みを取りこぼす可能性があります。
・人材のやる気の源泉を、質問と観察で捉える
・相手のやる気の源泉にあわせ、関わり方や役割を調整する
・個人の源泉を丁寧に見極める
ことが重要です。
人材のやる気の源泉を丁寧に見極め、関わり方を調整することで、関係性の改善や育成の成果につながりやすくなりますよ。
まずは部下に、「仕事で一番充実感を感じるのはどのようなときか」と聞いてみてください。
短い問いかけから動機づけの源泉が見え、声かけ・配置・育成の精度が上がっていきますよ。
小さな取り組みを積み重ね、組織の一体感や定着率の向上にもつなげていってくださいね。